第113話「雲が風の吹くままにふらふらと漂い歩く」

雲が風の吹くままにふらふらと漂い歩く。

「おー、そう言えばさっきの」

と、そこで不意に何かを思い出したかのように

「あれはどういう意味だ?」

「? 何の話ですか?」

私が尋ねた。

「ほれ、俺がお前の『初めて』を奪ったとかなんとか……」

「ああ、それはですね」

やや言いづらそうな様子で私が

「昨日、私の部屋に泊まったじゃないですか」

「ん? あぁ、まぁそうだな」

「その時に、その、色々とあって…………その、しちゃったじゃないですか」

「うん。したね」

「だから、つまりはその、そういうことです」

「えぇっと………………」

しばらく黙り込む。やがて、ぽつりと呟いた。

「……ごめん、ちょっとよく分かんないんだけど」

「私もです」

「だよなぁ」

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