第110話「夢」

「信」は伸に通じる。つまり、人間もまた一時の不遇は、他日の発展の基礎づくりとなるものだ。それを思えば、今日の苦難も将来への布石であるといえよう。しかし、その布石のためには、今を耐え忍ばねばならない。

(それにしても……)

いまひとつ気になることがあった。昨夜、一睡もしないままに朝を迎えたことだ。しかも、まだ疲れが取れない。この状態では、今日一日を無事に過ごせるかどうか自信がない。

(そういえば……)

ふと思い出したことがあった。それは昨夜のことだが、眠りに落ちる前に見た夢だった。

妙な夢を見たのだ。場所はどこだかわからないが、どこか大きな屋敷の中での出来事らしい。そこで自分は見知らぬ男と話していた。その男は、自分のことを大金持だという。そして、自分に何か大切なものを預けたのだ。

目覚めた時、それが何であったのか思い出せなかった。ただ、その男が最後に言った言葉だけは記憶に残っている。

「あなたにはこれから大変なことが降りかかってくるでしょう。でも、心配はいりませんよ。あなたの力になる人が必ず現れますからね。それまで辛抱してください。私を信じて待っていなさい」

そんなことを言っていたような気がする。

(あれは何だったんだろう?)

思い出そうとするのだが、どうしてもはっきりしなかった。しかし、どうにも気になって仕方がなかった。

(あの夢の中の男……)

自分にとって大事な預かり物だとか言っていたが、いったい何を預かったというのだろう? 考えれば考えるほどわからなくなる。しかし、その夢の中に出てきた男の顔や姿は鮮明に覚えている。

不思議なことに、夢の中に出てくる人物たちは皆美少女ばかりなのだ。

(まあ、いいか)

いくら考えても思い出せないものは仕方ない。私は家を出た。

(ん?)

その時、不意にあることに気づいた。それは、私の家の門の前にいる若い女の姿だった。彼女は私が出てくるのを待っていたようだ。

(誰だ?)

よく見ると夢に出てきた娘だった。

「あっ……」

「来ちゃった……///」

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