第109話「砂浜の女子高生」
黒髪ポニーテールの女子高生が白いビキニで砂浜に立っている。
「え? 何? あれ?」
と、俺は目を丸くして驚いていた。いや、待てよ? どこか見覚えがある気がするな……って!
「サクヤ……?」
そう呟くと、女性はこちらに気付いたのか笑顔を浮かべた。その顔を見た瞬間、俺の中で何かが弾けるような感覚が走る。そして、俺は砂浜を駆け出していた。
「おぉぉおおッ!」
雄叫びを上げながら女性に向かって全力で走り出す。すると、女性は笑みを深めてから俺に向かって手を伸ばした。
「アレグロ」
魔法を使った瞬間、一気に加速する。あっという間に女性に追いつくと、そのまま抱き着こうとしたけど避けられてしまった。
「うおっ!?」
勢い余ったせいか転びそうになったところを、女性が受け止める。そして、女性は優しく微笑むと頬に手を当ててきた。
「おかえりなさい、タケルさん。無事で良かったわ」
「……あぁ、ただいま」
再会を喜ぶようにお互い抱きしめ合う。数秒後、俺たちはすぐに離れると苦笑いを浮かべ合った。
「随分、背が伸びましたね。それに少し痩せたかしら?」
「まぁな。でも、今は鍛えてるから筋肉が付いたんだと思うぞ」
「ふふっ、それは頼もしいわ」
俺を見上げながら話す女子高生は、とても綺麗だった。
「久しぶりだな、サクヤ。元気にしてたか?」
「うん。タケルも元気そうだね」
「おう。こっちの世界に来てから結構経つからな」
「そっか……じゃあ、僕たちと同じなんだね」
「同じ?」
首を傾げると、サクヤは小さく笑ってから口を開いた。
「実は僕、ずっと眠っていたんだ」
「眠っていた? それってどういう……」
言いかけると、なんと周りの空間が歪んでしまった。
「え……?」
突然の出来事に戸惑っていると、目の前にいるサクヤの姿が変化していく。ビキニから真っ白なワンピースになっていた。
「サクヤなのか?」
「……」
問いかけても返事がない。不安になっていると、ゆっくりと目を開くサクヤの顔を見て言葉を失った。瞳孔が完全に開いた目は虚ろになり、まるで死んでいるかのように思えるほど表情がなかったからだ。
「さ、サクヤ?」
もう一度呼びかけるも反応はなかった。
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