第92話「分配」

ある記事である経営者が

「私たちとしても生き残るために必死になってやってきた結果がこれなんで。分配分配と言われても困りますよ」

って、あんたら社長さんが金出してああしろこうしろって言ってきた結果がこれじゃんとは思ったが、その後ウクライナのことでうやむやになった感がある。世の中「金」、「天下り」、「接待」をやってきたやつらが生き残るんだ。

なんて悟ったようなことを思っていたら、スマホに着信。

「もしもし」

「お兄ちゃん! 今どこ!?」

「ん? 家にいるけど?」

「なにしてるの?」

「別に普通だけど」

「あのさー、今日はバイトないよね?」

「うん」

「じゃあ、ちょっと買い物してきてほしいんだけど……」

「いいけど、なに買えばいいんだ?」

「えっとねー、肉まんとピザまんと豚角煮まんとチョコまん!」

「はいはい」

俺は妹から頼まれた買い出しに行くことにした。しかしまぁ、よく食うなあいつ……。そして俺がコンビニに向かっている最中、とある店の前を通りかかったとき、見知った顔を発見した。

「あれ? 桐乃?」

そう、そこにいたのは制服姿の妹だったのだ。どうやら学校の帰りらしい。妹の通う高校は、ここから電車に乗って二駅ほど行ったところにある。この辺りでは一番大きな駅で、俺も何度か足を運んだことがあった。

「おい……」

振り向いた桐乃と思われた女は血まみれだった。

「ひぇ……」

女はそのまま前のめりに倒れた。桐乃に電話をかけると、女の体から着信音が鳴った。

「嘘だろ……?」

俺は呆然とした。

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