第90話「前菜」
「前菜前菜前菜前菜前菜! サラダお食べ~!」
学生寮の食堂のおばちゃんが叫ぶ。寮生は全員で六十人弱。食事の量も結構なものだ。だが、それをたった一人で賄うおばちゃんには頭が上がらない。
「おーい、誰か手伝うか?」
俺はそう声をかけると、
「おう、助かるぜ。じゃあ、そっちに持ってってくれ」
そう言われて俺は料理を運ぶ係に任命された。
「ふぅ~、終わったか……」
一息ついたところで、食事を始めた。
「今日も美味いなぁ。うんまい!」
近くには女子組三人がいる。
「はい、この野菜スープ美味しいですわね。ほのかに甘みがあって……」
「ああ、俺もそれ好きだぞ。あと、この魚介の揚げ物もいいよなぁ。サクッとしていてさぁ」
「えぇ……私にはちょっと油っこいかしら……。でもまぁ、確かにおいしいけど……」
「うん? どうしたんだ?」
俺は気になって聞いてみた。
「いえ、なんでもないですよ?」
一人が答えた。
「そうか、ならいいんだけど」
そんなこんなで昼食を終えた俺たちは午後の授業へと向かおうとした。
「ぐあああああ!!!!!」
さっきの三人組のうちの一人が叫びながら倒れた。
「おい、どうした!?」
「おなかが……」
「なんだって!?」
よく見ると、三人とも顔色が悪い。それに気づいた周りの連中が騒ぎ始めた。
「大変だ! あいつら食中毒になったみたいだぞ!」
一人の男子が真っ青な顔で食堂に入ってきた。
「みんな逃げろぉぉ!! 早くここから逃げるんだぁぁ!!」
「キャアァァァァァァァ!!!!」
阿鼻叫喚の中、俺は意識を失った。
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