第76話「勇気ビンビン」

「勇気ビンビン! ビンビンビビンビン、勇気ビンビン、ビビンバ~ン!」

そして僕は、勢いよく扉を開け放った。僕がやってきたのは、とあるマンションの一室だった。部屋の中には、僕以外に三人の人物がいた。一人は、僕の幼馴染で親友の女の子。もう一人は、僕たちの通う高校の保険医の先生。あとの一人は、その友達だという女の人だ。三人とも驚いた表情をしている。ちなみに今の僕の格好だけど……うん、まあちょっとだけ事情があって、今朝は女装しているんだよね。でも今はそんなこと気にしていられないから、とりあえずスルーしよう。

さてと、ここからが勝負だよ。まずは挨拶からだね。……よしっ! 心の準備ができたところで、僕は元気よく声を上げた。

「お待たせしました皆さん! あなたの心の傷を癒すためにやってきたカウンセラーです!…………ってあれ? どうしたんですかみんな?」

なぜか三人揃って呆然としていた。なんだろう? ……あっ、もしかしてこの格好かな? そういえばまだ説明していなかったもんなぁ。仕方ない、ちゃんと説明しよう。

「実はですね……」

僕は改めて自分の姿を三人に見せる。すると、彼女たちの顔色が見るみるうちに変わっていった。

「えぇ!? 何それ!?」

「まさかそういう趣味があったとは……。予想外だったわ」

「あの、本当に大丈夫ですか? 顔色が悪いですよ?」

三者三様の反応を見せる三人。僕は慌てて弁明する。

「ち、違いますよ! これはれっきとした仕事着なんですよ! ほらここに書いてあるでしょう?『心理カウンセラー・七瀬五月』って!」

そう言って、僕は手に持っていた名刺を見せた。そこには確かにそう書かれているはずだ。だって自分で書いたんだもの。「それに、今日一日はこの姿で仕事をすることに決めているんです! だから変な誤解しないでください!」

必死になって訴える。すると、三人は顔を見合わせて相談し始めた。

「う~ん、どうしましょう? 私は別に構わないけど……」

「まあいいんじゃない? 本人が嫌がっているわけでもないみたいだし」

「そうですね。本人がいいと言うならそれでいいと思います」

よかった。なんとか分かってくれたようだ。ほっと胸を撫で下ろした時だった。

「何をふざけてんだ~!?」

突然部屋に乱入してきた男がいきなり僕をぼかぼか殴りつける。いたいいたい僕はたまらず退散した。

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