第71話「手紙」

ぴょん之介は、まだ一年生なので字が読めません。

そこで、先生から手紙を渡されました。手紙には、こう書いてありました。

「ぴょん之介は、この春に小学校へ入りました。そのときに、入学祝いとして、お父上さまから金百円と、母上さまから銀十枚いただきました。これは、ぴょん之介が大切に持っていなさい。そして、ぴょん之介が大人になったら、そのお金で何かを買いましょうね」

さて、みんなで相談して、誰に一番に読ませるか決めることになりました。そこで、ぴょん一郎さんが手を挙げました。

「ぼくが一番に読むよ。だって、ぼくは長男だからね。もし、これが本当の話なら、ぼくは大金持ちだもの」

しかし、みんなは首を横に振ります。そんなわけないでしょう? でも、本当にそうだったのです。ぴょん一郎さんが読んでみると…… ぴょん三郎さんのところにも、同じ文面の手紙が来ていました。それを読んで、ぴょん三郎さんも言いました。うそだと思うけどなあ。「まあいいや。じゃあ、次はおれだ! 」

ぴょろ助さんにも手紙が届いていたのです。それを、ぴょろ助さんは読み始めました。

「えーと…… ぴょろ助さんのお父上は、ご病気のため亡くなりました。お葬式代として、金百円を贈ります。これは、ぴょろ助さんのものになります。それから、お母さんのところには銀十枚と、お父さんのところには銀五十枚届きました。これも、ぴょろ助さんのものです。そして、このお金で買えるだけ高いお菓子を買って食べなさい。いいですか?」

「なんだ、やっぱり嘘じゃないか」と、ぴょろ助さんが言うと、「ちぇっ、つまんねえの」と、みんなも口をそろえて言いました。

すると、そこに猫神さまが現れて言いました。

「おい、お前たち。人の話は最後まで聞きなさい」

それでみんな黙って聞いていると、最後にこう書かれていました。

「これは、全部ほんとうの話だよ。だって、わしが決めたんだからね」

これで決まりました。

ぴょん十郎さんは、さっそくお父さんに手紙を書きました。そして、ぴょん一郎さんも、お母さんに手紙を書いたのです。

ぴょん一郎さんの書いた手紙には、こう書いてありました。

「ぼくが大人になったら、きっとお金持ちになると思います。そのお金で、みんなを幸せにしてあげたいと思います。どうぞ、よろしくお願いします」

ぴょろ助さんの書いた手紙には、こんなふうにありました。

「ぼくは大人になったら、ぴょろ助という立派な名前にふさわしい人間になりたいと思っています。だから、どうかお金を貸してください。もし、返せなかったら、その分を一生かけて働いて返します。だから、ぼくに、お金を貸してください」

こうして、ぴょろ助さんはお金を借りることができました。

ぴょん三郎さんのところにも手紙が来ていました。それを読んだぴょん三郎さんは、すぐにお母さんに手紙を書いて送りました。

「うちは貧乏だから、もうたくさんです。わたしが大人になるまで待っていてください」

ところが、手紙を受け取ったお母さんが言いました。

「ぴょん三郎さん、あなたは長男なんですから、あなたのものです」

ぴょん三郎さんも、自分のものだと思いました。

ぴょんぴょんぴょんぴょんぴょんぴょん…………

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