第62話「求めよ、さらば与えられん。」

「求めよ、さらば与えられん。尋ねよ、さらば見出さん。門を叩け、さらば開かれん。……」聖書の一説が脳裏に浮かぶ。

だがしかし、俺にはその言葉を素直に実行できる勇気もなければ度胸もない。

そもそもこの施設は俺のものじゃないしなぁ……。そんなことを考えながら、俺はしばらくその部屋で待つことにした。部屋の隅に置かれた椅子に座ってから数時間ほど経った頃だろうか。相変わらずの沈黙と暗闇の中、不意にガチャリという扉を開くような音が聞こえてきた。

「……?」

なんの音だろう? そう思った瞬間、目の前に突然、白い光が差し込んだ。そして、それと同時に声が響いてくる。

「おー! いたいた! やっと見つけたぜ!」

光の向こう側から聞こえてきたのは若い男の声だった。どうやらこの部屋に入ってきたらしい。まあ……この建物の中にいる人間なんて限られているわけだし、当然と言えば当然か。

「……」

俺は無言のまま顔を上げる。するとそこには金髪碧眼の男がいた。背は高く、体格もいい。整った顔立ちをしているイケメンだ。年齢は二十歳前後といったところだろうか。黒い革製の服に身を包み、腰には銃を携えている。恐らくどこかの自警団に所属している者って感じかな。

「君が例の侵入者くんかい?……うん、なかなか強そうだね」

男は口元に笑みを浮かべると、俺を見つめながら言った。

「…………」

俺は無言のまま男の顔を見る。なんだか妙な雰囲気を持っている人だなと思った。言葉遣いこそ丁寧だけど、目つきといい、表情といい、ちょっと普通ではない雰囲気を感じる。ただ、見た目だけで判断するなら、そこまで悪人ではなさそうな気がした。

「さてと、とりあえず自己紹介をしておこうか。僕はアメリアーダ自警団所属のルーカス・ウォーカー。君は?」

「……えっと、タケルです」

「へぇ、タケルっていうんだ。よろしくね」

そう言うと、ルーカスと名乗った男は手を差し出して来た。握手を求めているようだ。俺は少し躊躇った後、ゆっくりと右手を伸ばす。ルーカスの手を握った瞬間、彼は小さく微笑む。「ふぅん、なるほどねぇ……」

「……あの、何か?」

「君はここで死んでもらうよ」

「え?」

銃声。

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