第37話「ここに、女の子になるための何かがある。」

ここに、女の子になるための何かがある。

「う……」

僕は下唇を噛み締めた。

「くそっ!」

どうしてこんなことをしなくちゃいけないんだ! どうして僕が……。

「うわあああっ!」

「え?」

その時、僕の後ろから声が聞こえてきた。振り返ると、そこには、今まさに教室に入ろうとしている女子生徒がいた。

「やばいっ」

僕は慌てて机の中に手を突っ込み、カバンを取り出して床に落とすと、その中に入っていた教科書類を全て外に投げ捨てる。そして、その上に着ていたブレザーも脱ぎ捨てた。

「はぁ、はぁ……」

「何してんの?」

女子生徒に気づかれていた。

「さっきの叫び声は!?」

僕は話をそらそうとした。

「いやそれより今のはなんでそんなことしたの?」

「別にいいじゃんかよ」

僕は顔を背けた。すると、女子生徒が近づいてくる気配を感じた。

「なんだよ」

僕は顔を上げて睨みつけた。しかし、目の前にいる彼女は不思議そうな表情を浮かべているだけだった。彼女は僕のことをじっと見つめたままだ。僕は彼女の視線に耐えきれず目を逸らした。そこで僕は気づいた。彼女が手に持っているものが目に入ったからだ。それは紛れもなく女子用の制服だった。

「それって……」

「これ?これは君のだよ」

「違う、俺のじゃない!」

「でも君の名前が書いてあるけど」

そう言って彼女は手の中にあるものを僕に見せてきた。確かに僕の名前が書かれている。間違いない、僕の字だ。

「知らないんだ!」

「じゃあ誰のものなの?」

「だからそれもわからないんだよ!」

「ふーん、まあいっか」

「へ?」

僕は思わず間抜けな声を出してしまった。彼女は制服を持ったまま自分の席に向かって歩いていく。

「ちょっと待ってくれよ!」

彼女は僕に顔を向けると

「授業始まる前にさっき外に投げたの取ってきなよ」

「……」

僕は外に出た。

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