第30話「「貪り」などと…」

高名な僧侶がぼやいた。

「『貪り』などと言って現代の資本主義社会を批判するなど…そのおかげで高価な仏教書が市場に出回っているというのに…」

「そうですね、でもまあ、あれは仕方ないでしょう」

と若い僧も言った。

「あれは我々から見れば『お布施をたくさん集めるための方便』ですからね。実際問題として『貪欲な金持ち』の方がより多くの富を生み出すのですから」

「全くだ。この世に『悪』というものは存在しない。存在するのは『善人面をした悪人』だけだよ」

「それにしても……」

と、今度は年配の僧が口を開いた。

「あの『方便』のおかげで我らの懐にも潤いがある。『貪り』という言葉を使ってはいるが、実際は『お金儲け』のために行っていることなのだよ」

「そうですねえ」

と若い僧も相槌を打つ。

「しかし、仏の道を行くという立場であるからおおっぴらに欲をかいている姿を見せることもするまい。お国の手心で解散させられるかもしれんからな」

その場の者たちが頷いた。

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