第29話「私の名前は赤塚ゆき」

私の名前は赤塚ゆき。私は今、とある人物の家の前に立っている。時刻は午前0時を回っているが、彼女は起きているだろうか?

「まぁ、起きてないなら起きてないで別にいいんですけどね」

私がそう呟くと、ポケットから鍵を取り出しドアを開ける。玄関の電気をつけると靴を脱ぎ散らかしリビングへ急ぐ。リビングの扉を開くとそこにはパソコンに向かい何かをしている彼女の姿があった。

「ただいま戻りましたよーっと……ってあれ?」返事がない。どうやら聞こえていないようだ。集中しているのか私の気配に気がついていないみたいだ。仕方ないので彼の近くまで歩み寄り顔を覗き込むようにして声をかける。

「ねぇ、葵さん聞いてますかー?」

すると彼女はビクッとして驚いたように顔を上げた。

「うわっ!ゆ、ゆきさん!?びっくりした……」

「あはは、すみません驚かせちゃいましたかね?ところで何してたんですか?」

「え?あぁこれですか?ちょっとゲーム作ろうと思ってプログラムいじってたんですよ」

「おぉ!すごいじゃないですか!」

「いやぁそれほどでも……って、それ褒められてる気がしないです」

「アハハーなんのことかなー」

「棒読みじゃないですか!というか早く帰ってきてくださいよ!もう日付変わってるじゃないですか!」

「あー、はいはい。ごめんなさいね」

「絶対思ってないですよね!?」

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