第26話「白雲深き処」

谷川の静かな情景が私を誘い、川を越えさせる。山に入れば、雪をかぶった松の枝につたかずらがかかる。青山がやがて尽き、白雲の閉ざす所、そこここに座禅の僧がおわす。塵外清浄の境をよく写していた。

「悟るとはどういうことでしょうか?」

僧侶に聞いた。

「竹に石のあたる音を聞いて悟った禅師がいます。桃の花を見て心を明らめた禅師もいます。時をむなしく過ごさなければ縁により悟れるでしょう」

僧侶に手を合わせた。


参考文献

東京書籍 鈴木修次編著『漢詩漢文名言辞典』 無限の青山 行くゆく尽きんと欲す 白雲深き処 老僧多し 釈霊一

ちくま学芸文庫 水野弥穂子訳 道元『正法眼蔵随聞記』

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