第6話 感情春子、夏子、小田、加奈・農業用長靴から、こんなオチになるのかよっ!?編 全ては魔法少女のために!!編

「農業用長靴をおごって欲しい?」

 俺はもう一度確認した。

「ほら、前、月村君、農業用長靴もおごってくれるって言ってたでしょ? 日曜日にボランティアで、農業作業をするの。だからお願い」

 春子は答えた。

 そんなことまで覚えていたのか。

「じゃあ、明日、俺が使ってたやつ、学校に持ってくるよ」

 俺は言った。

「だめ。新品が欲しい。放課後、『作業店』に行くから、一緒に付いて来て」

 春子は言った。

 やれやれ。

 開き直っていたとはいえ、変なことを言ってしまったな。

 俺は後悔した。

 俺と春子は教室へと戻った。



 放課後。

 春子が俺の所へとやって来る。

「さぁ、行きましょ」

 春子は言った。

 春子が、俺に話し掛けるのが珍しいからか、クラスの女子は、ヒソヒソ話をしている。

「何? 何処行くの?」

 隣の席の噂好きの女子、美香が興味津々で聞いてきた。

「『作業店』よ。ボランティアで使う長靴をおごってもらうの」

 春子は答えた。

「へぇー。二人で?」

 美香はニヤニヤしている。

「そうよ」

 春子は不機嫌そうに答えた。

 春子は続けて、

「美香、変な噂流さないでよ」

 と、美香に忠告した。

「はいはい、行ってらっしゃい」

 美香は観念したかのように言った。

 俺と春子は教室を出た。



 教室を出て、下駄箱に着くまでの間、周囲の好奇な目線を感じた。

 俺と春子が一緒に歩いてるのが、不思議でしょうがないんだろう。

「うざったいな」

 俺は思わず声に出た。

「何? 私のこと?」

 春子が聞いてきた。

「そうじゃない。周囲の視線だよ」

 俺は不機嫌そうに答えた。

「そうね。さっさと外に出ましょ」

 春子も同じことを感じていたようだ。

 後ろから、

「春姉(はるねえ)。何処行くの?」

 と、秋子が声を掛けてきた。

 秋子は『花形三姉妹』の三女だから、長女の春子のことを春姉(はるねえ)と呼んでいる。

「『作業店』よ」

 春子は答えた。

 そうだ、秋子に、靴箱のメモの意味を聞かなくては。

 それに、俺に対する感情もはっきりと知りたい。

 前みたいに、廊下の奥の方へ連れ出そう。

「春子さん、あのさー」

 俺が言いかけた時、

「・・・・・・友美さん、あれから、どう?」

 と、秋子が制止するように言った。

「えっ」

 まさか、幼馴染の友美のことを聞いてくるなんて。

「どうなの?」

 秋子は言った。

「どうって・・・・・・別に。あれから、話してないし」

 俺は返答に困った。

 本当にあれから、友美とは話してない。

「友美?」

 春子は不思議そうにしている。

「春姉(はるねえ)、今日の生徒会は欠席するの?」

 秋子は聞いた。

「うん」

 春子は頷く。

「『作業店』で何買うの?」

 秋子は聞いた。

「農業用長靴よ。おごってもらうの」

 春子は答えた。

「それなら、うちの物置きにー」

 秋子がそう言い掛けると、

「さ、行くよ」

 と、春子はその言葉を制止するように、俺の背中を押した。



 俺と春子は、学校の外に出て、『作業店』へ。

 俺はさっきの春子の様子から、俺のことを好きなのは、春子じゃないのかと考えていた。

 でも相変わらず、俺に対しての春子の感情は、嫌悪感、嫌いという感情だった。

 なら、さっきのあの思わせぶりな態度は?

 春子は立ち止まる。

「どうした?」

 俺は春子を見た。

 春子は『ペットショップ』のショーウインドーを眺めている。

「キャーかわいい」

 春子は、無邪気な子供みたいに、はしゃいでいた。

「寄ってくか?」

 俺は聞いた。

「いや、いい。行きましょ」

 春子は再び歩き出す。

 ーが、また立ち止まって、ショーウインドーの方を見た。

 俺は溜め息をついて、

「入ろうか?」

 と、再び聞いた。

「いや、いい」

 春子は、また歩き出そうとするが、気になっているからか、チラチラとショーウインドーを眺める。

「面倒臭いなぁ」

 俺は春子の手を引っ張って、ペットショップへと入った。

「なっ、ちょ、いいって。触らないでよ」

 春子は戸惑っている。

「ほら、遠慮するなよ」

 俺は言った。

「いいって。離してよ」

 春子に言われて、俺は手を離す。

 多数の犬、猫などが、檻の中で、ワンワン、ニャーニャー鳴いている。

「わぁ、かわいいー!!」

 春子は目を輝かせて、檻の中の犬や猫を眺める。

 そして、また無邪気な子供みたいに、はしゃぎ出す。

 もう俺のことなど、眼中にないみたいだ。

 俺は暇だから、春子の感情を読み取ってみた。

 その感情からは、大きな好意感、大好きな感情が読み取れた。

 まぁ、そうだろう。

 この大好きな感情は、俺じゃなく、ペットの犬や猫などに向けられているんだから。

 俺は檻に入っている犬を眺めた。

 俺に対して、嫌悪感、嫌いな感情が読み取れた。

 俺はペットの犬にも嫌われるのかー。

 俺は「お手」と言って、手を差し出した。

 犬は俺の手にガブリと噛み付く。

「いてぇーーー!!」

 俺は悲鳴を上げた。

 春子はそれを見て、大笑いした。



 『ペットショップ』に長く滞在したからか、もう夜になっていた。

 『作業店』に着いたのは、午後八時。

 春子の農業用長靴を買ってあげて、店を出る。

「ありがとう」

 春子は軽く頭を下げた。

「おごるって言ってしまったからな」

 俺は言った。

「手、もう大丈夫?」

 春子は俺の手を見てきた。

 犬に噛まれた方の手は、包帯で巻かれている。

「あの狂犬め」

 俺は犬が嫌いになった。

「おもしろかった」

 春子は思い出し笑いをした。

「じゃ、私、こっちの道だから」

 春子はそう言って、俺が歩いている道とは違う方向へと歩き出す。

「ああ、それじゃ」

 俺は自宅(実家)へと戻った。



 ~冬の十二月四日、土曜日~

 今日は学校が休みだから、ゆっくりと昼過ぎまで寝た。

 外の冬風が、窓に強く当たって、音を立てている。

 家からは出る気になれない。

 部屋からも出る気になれない。

 今日は一日中ゲームで過ごそう。

 俺は携帯ゲーム機を手に取ろうとする。

 手に力が入らなくて、携帯ゲーム機を床に落としてしまった。

 犬に噛まれた方の手に力が入らない。

 あの犬め~。

 そういえば、明日、夏子と小田と加奈とフットサルか。

 かったるいなぁ。

 本当に行くのか?

 俺に何のメリットがある?

 何で、あいつらのエゴに、俺が付き合わされなきゃならないんだ。

 断るか?

 だけど連絡先知らない。

 聞いても教えてくれなかっただろう。

 しょうがない。

 明日、直接行って、断ろう。



 ~冬の十二月五日、日曜日~

 俺は、渋谷駅のハチ公前広場に行った。

 朝六時に。

 冬の寒さと風が、体に染み渡る。

 寒い。

 早く家に戻りたい。

 まだ人は少ない。

 チラホラいる程度。

 夏子、小田、加奈がやって来た。

「来てくれてありがとう」

 夏子は言った。

「来ないかと思ったぜ」

 小田は言った。

「私は来ると思っていた」

 加奈は言った。

「悪いな、断りに来たんだ。連絡先知らないし」

 俺は言った。

 夏子、小田、加奈は驚く。

 そして、顔を見合わせた。

「それじゃ」

 俺はその場から去ろうとする。

「・・・・・・協力してくれるのなら、魔法少女まぞか☆マジカのヒムラ冬限定フィギアあげる」

 加奈は言った。

 何?

 俺は立ち止まった。

 俺は、前から、そのフィギアが欲しかったが、どこも完売で、諦めていた。

 誰にも話してないのに、何故知っているんだ?

「さぁ、どうするの?」

 加奈は言った。

「クソッ」

 俺は観念した。

「よし、決まりね」

 加奈はそう言って、高速バス停へと向かう。

 夏子、小田も加奈の後を付いて行く。

「あれ? 何で高速バス停に行くんだ?」

 俺は不思議に思った。

 加奈、夏子、小田は、無言で歩く。

 そして、停車している高速バスの前に行き、

「はい、これ」

と、加奈がチケットを渡してきた。


 チケットには、【長野県白馬町往復チケット】と書かれていた。




















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相手の感情を読み取る能力が高い月村剣太 VS 感情を読ませない花形三姉妹 満月そーめん @wweraw

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