たった一言で

maise

号泣した話

 これは、私がとある一言で、号泣した話です。





 私は、とある学校で、クラスの合唱リーダーを務めています。


 私の学校は、とても合唱が盛んです。私もそれを知っていて、そんな学校のクラスの合唱リーダーに選ばれたことを、とても誇りに思っています。


 リーダーは男女一人ずつ。つまり、私ともう一人の男の子と一緒に、リーダーとして活動していました。


 リーダーの主な仕事は、日々の合唱時間の指揮、指導。そして合唱祭に向けて、クラスを引っ張っていくことです。私は合唱祭の練習を引っ張っていけるのを、今か今かと待ち望んでいたのを覚えています。


 そして待ち望んだ、合唱祭の練習が始まりました。


 本当は課題曲と自由曲があるのですが、某ウイルスの関係で、自由曲のみになってしまいました。


 合唱祭のための練習は、とても大変なものでした。


 クラスのみんなを引っ張って指示をするだけでなく、練習日程、時間、内容について、考えておかなければならなかったのです。

 しかも、私のコミュニケーション能力が低いせいで、もう一人のリーダーとも連携が取れません。今考えてみれば、もう一人の子も協力的だったので、普通に話せていれば、苦労はしなかったのかもしれません…

 

 そんな感じで、どう指示をしたらいいのかもわからず、途方に暮れながら、練習に明け暮れていました。

 クラスが集合しない、指示を聞いてくれない、予定が狂う…

 そんな日々に、私は疲れ果ててしまいました。

 ベッドの上で泣いたこともありました。

 

 ですが、一人、私にとって、癒しの男の子がいました。仮にケイ君とします。

 失礼かもしれませんが…イケメンという顔立ちでも、かわいいというわけでもありませんが、高身長で、なにか気を引くところがありました。

 さらに、とても話しやすい、当時異性と話せなかった私にとって、特別な存在でした。恋愛感情はありませんでした。いわゆる、「推し」というものでしょう。


 見ているだけで癒しでした。ですが、話すとまた楽しい。塾も同じで、一度だけ二人きりになり、話した時がありました。 

 また、私は時間になったら立って待つといったルールに神経質な性格をしており、うるさい人がいるとイライラしてしまうのですが、その注意も一緒にしてくれていました。その子がいるだけで、日々のストレスが軽減しました。


 それほどまでにケイ君は、私の心の支えとなっていたのです。


 話がそれましたが、その子の心の支えがあったおかげで、私は頑張ることができました。そして、合唱祭でも優勝することができました!


 ですが、私が話したかったのは、そこではありません。本題はここからです。


 合唱祭の優勝により、賞状をもらいました。


 そして数日前、一年生が終わるということで、誰かがその賞状をもらうことになりました。誰がもらうかは、平等に、先生にじゃんけんで勝った人。

 

 私とケイ君含め、クラスのほとんどが参加しました。


 私は一回戦目で惨敗。ケイ君が勝ち、見事賞状を手にしたのでした。


 ですが放課後、これがいけなかったのですが、私がいいなと思って、ケイ君の手にある賞状をみていると、

「いる?」

 と。


 とっさに私は、

「いや、大丈夫! 気、使わないで!」

 と言いました。そのまま部活に行こうとすると、ケイ君が廊下で賞状を渡してくれました。この時に断ればよかったと、私も思っています。

 返そうとすると、全力で逃亡し、部室に入ってしまうケイ君。


 どうしようかともんもんとしながら、部活をしたのを覚えています。


 そして帰り、ケイ君を待ち、

「やっぱり返す」

 と言うも、受け入れてくれないケイ君。

 結局、賞状は私がもらってしまいました。


 そのあと家に帰り、せめて最後の確認とお礼だけでもと、L〇NEでケイ君に連絡。


 その時に、ケイ君がかけてくれた言葉に、私は号泣したのです。

 大体の内容ですが、やりとりはこんな感じ。


 私『ケイ君、本当にいいんですか? ほしかったんじゃないんですか?…』

 と、再確認のメールを。(長いので省略します。)


 ケイ君『いやそこはリーダーがもらわなきゃ。』


 私『そういうことじゃない!』

 ついとっさにきつめに言ってしまった私。ですがそんなこと気にもせずに、ケイ君は続けます。


 ケイ君『俺がもらっても将来的に紙ゴミになる。』

 将来って…

 もらってほしいけど紙ゴミになるという結末を聞くと、どう返信したものかと悩んでしまい、二十分ほど考えたのち、


 私『…本当にいいの?』

 という文に。それに対し、


 ケイ君『いいよ。』

 と。そしてケイ君はこう続けたのです。




 ケイ君『一番頑張ったのは私だし。』

   『飾って。』





 ほかの人からしたら、何気ない文章でしょう。ですが私にとって、この文章はかなり響きました。


 驚きのあまり言葉を失う私。


 私『…ありがとう☺』

 とスタンプだけを送信し、いったん画面を閉じました。


 そして賞状を手に取り、二階に上がり、ベッドに寝転がり、賞状を見上げるような形でしばらくボヤんとしていました。


『一番頑張ったのは私だし。』

 一番かどうかはわからないけれど、「頑張った」と言われたのは、私にとって、嬉しかったんです。


 リーダーとしてだけでなく、普段も…


 なかなか静かにならないクラスに、『時間だよ!』と言い続けていました。

 なのにだんだんと、聞いていても無視して、準備すらしてくれませんでした。

 先生に面談などで言われることはあっても、クラスメイトに面と向かって言われることはありませんでした。


 それが当たり前だと思われていたような気がしました。


 私が、みんなに『時間だよ!』と言い続けるのは当然で、ほかの人が言ったらすごい。そう思われているような気がしました。


 そう思ったのは、クラスでは普段うるさい、いわゆる「陽キャ」が珍しく注意すると、先生が、

「いいねぇ。」

 と言った時のことです。


 どうして? どうしてその子はそこで褒められるの?


 私なんかほぼ毎日やっているのに?


 そのせいで「真面目」という印象が付いてしまっているのに?


 息がひゅっとなるというのは、こういうことを言うのかと思いました。


 辛かったんです。


 ですが、ケイ君の言葉で、それがすべて、報われたような気持ちになりました。


 そう考えると、ぼろぼろと涙が。


 おそらく本人は、今まで私が考えたようなことは考えていないでしょう。しつこい私に対応できるように、納得してもらえるように作った文なのでしょう。

 そんなことも頭によぎりましたが、私にとって、そんなこと関係ありませんでした。


 結局そのまましばらく泣いて、眠ってしまいました。






 以上が数日前に起こった出来事です。


 数日たった今でも、その文を見ると涙が出てきます。


 なんだ、大した話じゃないじゃん。


 そう思われた方もいるでしょう。期待外れだったらごめんなさい。


 ですが私にとっては大きな出来事だったので、書かせていただきました。


 私がこの経験をして思ったのは、


『頑張りは誰かが見てくれている。』


 ということ。


 私も今までこの意見に対し、否定的でした。

「そんなに都合よくいくわけないじゃん。」

 と。


 ですが都合よくいってしまいました。しかも修了式まであとわずかだというときに。


 ですのでこの文章を読んでくださった皆さん、努力はしてみてください。頑張ってください。見てくれている人がいるはずです。


 典型的な終わり方になってしまいすみません。以上でこの話は終わりです。

 皆様に幸福が訪れることを祈ります。





 







 

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