鈍感
夏伐
鈍感
朝、朝食を食べながらテレビを見ていると、母がドタドタと足音を立ててリビングに飛び込んできた。
「また出たの!!」
引っ越してから、母は霊感に目覚めたらしい。
枕元に男が出て何かをささやくと言う。
「私思うんだけど、この家って事故物件なんじゃないかしら!」
母がさも深刻そうにそう言った。
私は味噌汁を飲みながら、そんな母を眺める。
例の男は今も母に虚ろな瞳を向けて、耳元で何かをささやいている。
この部屋の隅では老婆が正座して虚空を見つめ、私たちしかいないはずなのに階段を上り下りする音が聞こえる。部屋を時折、子供が覗き込む。
「気にしすぎだって」
事故物件というよりもはや魔界みたいな状況で、さすがの母の鈍感も人並みに感覚が鋭くなってきたらしい。
母は「真面目に聞いてよ~」と言いながら朝食を作りにキッチンに行った。
男は母についていく。
あの男はこの家についているのではなく、母についている。引っ越す前からずっと何かをささやいている。
鈍感 夏伐 @brs83875an
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます