野球今日の詩

キャバレヲン

野球今日の詩

かつて穢れなき白球



かつて穢れなき白球だった俺

びっくりするくらい


ある日

すっかり汚れてた

ルールを覚えた日

思えばルールを覚えたかうる覚えの日

触れれぬ程でないにしてももう汚れてた



嗚呼

俺の白球



勝ち続けることは出来ない

審判の目を盗んでも

盗み続けることは出来ない

次の塁が本塁ならなおのこと

ありもしないバットを振って本塁打する


お前が待ってる本塁に俺が帰るまで

止まってた時間

お前の息も止まってただろう?



かつて等しく穢れなき白球

その手を離れたればなり



嗚呼

代打場外本塁打

その紙面も去りてあり



ある日汚れてた白球

帰る本塁のない走者はどこに行けばいい?

見えないバットでお前を打ちのめした

ドレスを着たら見えない部位を

聞きたい答えと

聞きたくない答え

恥も外聞も無く泣いてたのは俺


もう時が止まることはない二度と

遠くどっか行っちまったお前

去っちまったお前



あの本塁打

代打サヨナラ本塁打

俺たちのあの白球よりずっと遠く行っちまったお前

外野手は一歩も動かなかった

カクテル照明の向こうに俺たちの白球が消えちまっても

投手も一歩も動かなかった

ナイターの闇の向こうに俺が打った白球が消えちまうまで


もしかしてあれは俺

俺とお前




かつて等しく穢れなき白球



俺だけ

本塁に帰る俺と

本塁で待ってるお前だけがあん時息をしてた




かつて等しく穢れなき白球だった俺たち

もう二度と本塁で笑い合えないなんてな

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

野球今日の詩 キャバレヲン @kyaparen

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ