スマホの声

「木村、名演技だったな」

「皮肉なものですね、米山さんに騙されて収録した、偽ラジオドラマの演技力がこんな形で生かされるなんて……」

「そう言えば、モノマネ新人王の時に永田は、木村と勝負がしたいとか言っていたらしいな。夢が叶って良かったじゃないか。逮捕されるのも本望だろう」


全員、パトカーに乗り込み、永田の自宅へ向かう。

日吉は運転しながら野々村に尋ねる。

「野々村さん、そう言えば永田がモノマネする、関本の声ってそんなに似ていないのに、安藤を騙した時の声はそっくりだったじゃないですか? どういう事ですか?」

「スマホから聞こえる声というのは、その人の声じゃ無いのさ」

「は? じゃあ誰の声なんですか?」

「機械の音声なのさ」

「機械?」

「ああ、その人が話した声に最も近い機械の音に変えて伝える方法をとっているのさ」

「瞬時にそんな事が出来るんですか?」

「ああ、技術の進歩ってのは凄い。俺も専門家じゃ無いんで詳しくは知らないんだがな。だから、普段の声がそこまで似ていなくても、スマホが似ていると判断すれば近い音に変えられるって訳だ。とは言うものの、上手なモノマネタレントだからと言って、本人と同じ声に変換されるって訳でも無いらしい。逆に、あんまり似ていなくても、親子とかは同じ様な声に変換されやすいそうだ。永田は恐らくその辺りの事を知っていて、スマホを通した関本の声真似が関本本人の声にそっくりだという事に気が付いて、今回の詐欺を思い付いたんだろうな」

「なるほど……」


永田の自宅に着き、インターホンを押すと、今にも倒れそうな、顔面蒼白の永田が震えながら扉を開けた。小牧が永田に手錠を掛ける。野々村はザッと部屋を見回し、モノマネ新人王に輝いた時の片岡のモノマネマスクを見つけ、少し笑いながら木村に言う。

「木村、片岡のモノマネマスクがあるぞ」

木村は野々村に微笑んだ後、モノマネマスクを手に取り言う。

「事件は全て解決しました」

木村は超一流のモノマネを披露し、ゆっくり両手をくっつけ、日吉に差し出した。



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モノマネマスク ジャメヴ @jamais

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