第三章〜元カノ〜

【人形】


ガコン


鉄格子を開け、僕は人形を閉じ込めている『檻』の中に入った。


「あは…ひひひ…りょぉませんぱい…あいしてる…」


僕が腕に『29』と記したその女の頭の中には、もはや僕のことしか無いのだろう。

でも僕はキミだけを愛することは出来ないよ。


今日、妹と一緒に食べたリズナも、

前にリズナと一緒に食べたシュリも…

みんな僕の愛おしい可愛い人形なんだ。


僕は壁に飾ってある『1』から『28』までの元カノたちを眺めた。


腐敗していても、白骨化していても、関係ない。

彼女たち一人一人が僕だけの大切な人形だ。


ふと僕は、さっきから1人で笑っている元カノに話しかけた。


「ねえ、聞いてよ。妹が困ったことを言うんだよ。「お兄様みたいにお肉を美味しく焼きたい」ってさ。そんなのできるわけないよね?あ、そうだ。今度キミを使って試してみようか?ね、エミハ。」


「ひひひひゃひゃひゃひゃひゃ……」


常人なら怯えるはずだが、彼女にはもはや意味が通じていないのだろう。

でも、側から見たら不気味な彼女も、僕は愛している。



「愛してるよ…僕だけの大切な可愛い人形たち。」


そう呟き、僕は『檻』から出て鍵をかけ、物置部屋も今度はちゃんと鍵を閉めた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

元カレ絵日記 猫屋敷 鏡風 @mikaze_nekoyashiki

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ