4.虹臭い政治運動。

先述した通り、一〇年代に入るまで日本のゲイリブは低調し続けてきた。


日本最大のゲイリブ団体だった「東京プライドパレード」は、二〇〇七年と二〇一〇年の二度しかパレードを開くことができなかった。しかも、二〇一三年に解散する。


それでも、「東京プライド」が行なったパレードには、毎回二千名ほどの参加者がいたという。多少は盛った部分はあるだろうし、全てが性的少数者であったかも疑わしい。しかし、実際に参加した人の証言によれば決して大げさではないようだ。


ただし海外のゲイパレードに比べれば二千名でも格段に少ない。同じ東アジアでも、台湾のゲイパレードには毎年十万人以上が参加しているという。


それが二度しか実現しなかった理由は三つある。


一つは運営資金が足りなかったこと――つまり、ただの「行列」ではなく、「イベント」にするための力がなかったのだ。もう一つは人手が足りなかったこと――給料が出るわけでもない仕事など、やりたがる人は少ないだろう。最後は、運営内部でいさかいが頻発していたことである。


二〇一二年、パレードは「東京レインボープライド」に引き継がれた。


「東京プライド」とは違い、「レインボープライド」は毎年パレードを開催している(新型コロナウィルスが流行した二〇二〇年と二〇二一年を除く)。


二〇一四年のパレードには三千人が参加したという(主催者発表)。加えて、アメリカ・イギリス・オランダなど各国大使館の職員や、安倍昭恵首相夫人(当時)が参加した。さらには、グーグルやマイクロソフトなどの企業も屋台ブースを出している。


それまでのゲイリブとは何かが違っていた。


安定して運営できる資金が入りだしたことは言うまでもない。その出資者たちこそが、まとまりがなかった彼らを統率したのではないか。


各国の大使館職員や国際的企業が参加したことからも分かる通り、世界的な動きが背景にはあったのだろう。「LGBT」を商的に利用することは、電通独自のアイデアではなかったはずだ。性自認思想が、大富豪たちの手によってアメリカで広まったことを思い出してほしい。


同時に、レインボーパレードは左翼団体と強く結びつき始める。


二〇一四年は、レインボーパレードに「しばき隊」が山車フロートを出すようになった年だ。以降、「LGBT」界隈には彼らの姿が見え隠れするようになる。杉田水脈への抗議デモに至っては、「しばき隊」によって企画され、「レインボーパレード」によって動員された。


立憲民主党や日本共産党など、野党の政治家もパレードにこぞって参加するようになった。東京レインボーパレードが公開した動画の一つには、白いゴシック体で「立憲民主党」と書かれた六色旗が写っている――この文字を見てくださいと言わんばかりに。


見て判る通り、拝金主義と左翼運動が「LGBT」では矛盾なく共存している。


それは、そういう「思想」だからだ。「LGBT」とは当事者のことではない――拝金主義が左翼運動を利用する思想なのである。


「LGBT」向けの商法は失敗した。次の営業標的マーケティングターゲット多数派マジョリティであろう。多数派マジョリティたちは、「少数派マイノリティを理解しなければ」という思いから消費へ向かわせられるはずだ。そのうち「プライド月間」は「バレンタインデー」や「クリスマス」のような扱いになるのかもしれない。


言うなれば、LGBTは「理解者アライ」を作るための政治活動だ――行き着く先には商的利益がある。


LGBT活動家は、あちこちで講演会を開いて荒稼ぎしている。男女共用トイレも次々と作られ始めた。越境性差トランスジェンダーにされる子供が日本で生まれだすのも時間の問題だろう。


活動家の言葉を信じ、地方自治体は虹臭い条例を次々と生み出している――性的指向や性自認に基づく差別を禁止する条例や、アウティングを禁止する条例、パートナーシップ条例などを。


しかし、パートナーシップの利用率はどの自治体も壊滅的だ。


パートナーシップ条例を作った自治体の中には、「パートナー証明書」に好きな名前を書くことのできる自治体もある。すなわち、性自認に基づく名前を書けるようにするための配慮だ。


――こんな「証明書」に何の意味があるのか?


しかも、パートナーシップの利用率を調査したとき、私は気づかざるを得なかった――「ダイバーシティ推進課」だの「男女平等ダイバーシティ課」だのという部署が設けられている自治体がやたらと多いのだ(一方、同和人権課が扱っている所もあった)。


中には、「お問い合わせフォーム」の性別欄に、「男」と「女」の他に「自認する性」が設けられていた所もある。一応は「両性」と書いたのだが、何だか騙されたような気がした。


二〇二一年の衆議院選挙では、立民党の枝野は「LGBTQ+のあなたへ」という動画を公開した。


動画の中で、枝野はこう言っている。


「立憲民主党の中にも、そして私たちを支えてくれる仲間の中にも、LGBT+――レズビアン・ゲイ・両性愛者バイセクシュアル越境性差トランスジェンダー変態クィア性的不明者クェスチョニング—―他にも、様々なジェンダーやセクシュアリティの方がたくさんいます。」


「残念ながら、昨今はSNSを中心に、越境性差トランスジェンダーに対するバッシングが激しくなっています。(略)この国では、差別や苛めを受けても、泣き寝入りせざるを得ない現状が続いてきました。それは守ってくれる法律がないから。(略)」


「立憲民主党は、LGBT平等法を国会に既に提出しています――職場や学校・医療や福祉の場での差別的取り扱いを禁止する。政権をお預かり出来たら、担当大臣を置いて具体的な施策を進めます。(略)」https://www.youtube.com/watch?v=GxJAbpizVWg


見ているうちに枝野が可哀そうになってきた。


動画には批判が殺到する。当事者からの批判が特に多かった――「変態クィアなんかと一緒にするな」「女性スペースに男を入れることも差別なのか?」「苛めには侮辱罪や傷害罪などで対応できるのに、性的少数者だけ特別扱いする必要があるのか?」など。


選挙の結果、立民党は惨敗した。


「LGBT」に関心を寄せている当事者たちは、「T」が何を意味するのか既に気づいている。


松岡宗嗣や遠藤まめたのような活動家も嫌われている。松岡は、差別だと言うために詭弁を捻り出し、情報を恣意的に切り取り、悪意のある煽動を繰り返している。遠藤まめたは、子供たちを集めて思春期ブロッカーを勧めている有様だ。


だいたい、あまり頭の良くなさそうな彼らが、活動だけで食って行けるほど持て囃されている理由も分からない。やはり背後に誰かがいるのではないか。


「LGBT法」を掲げ、むしろ野党は票を減らしたかもしれない。


LGBTの問題に首を突っ込むようになり、フェミニストから積極的にRTされたりフォローされたりするようになった。彼女らの中には、共産党や社民党などの左派政党を支持していた人々も多い。ところが、LGBT思想に左派政党が嵌るようになり、不支持に転向せざるを得なくなったという――女性の権利を優先するがゆえに。


「LGBT」という言葉は、「SDGs」という(さらに胡散臭い)言葉に取って代わられつつある。


一つの言葉が飽きられたら、別の言葉に取って代わられる――昔から繰り返されてきたことだ。「LGBT」という言葉が流行遅れになるときも遠くないかもしれない。


金目当てで始まり、しばき隊や左翼団体が膨らませ、政治に利用されてきた――様々な思惑がぬえのように合体したものが「LGBTムーヴメント」だったのだ。

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