日本も危ない!

4.間違えてトランスした人たち。

間違えてトランスする人は大人にもいる。


二〇一九年・十一月――そんな一人の女性についてBBCニュースが報じた。

https://news.livedoor.com/lite/article_detail_amp/17469382/


彼女の名はデビー゠クレーメル――イギリス・ハートフォードシャー州在住であり、六十一歳である。一九九七年に男性と結婚した。だが、四十四歳のとき性別に違和感を抱く。精神科で診察を受けた結果、越境性差トランスジェンダーだと診断された。


この診断には「何か腑に落ちるもの」があったという。結果、男性ホルモンを服用し始め、名前も男性に変える。診断から数か月後には乳房切除手術を受け、二年後には子宮摘出手術を受けた。最終的には、腕の肉を切り取って陰茎を形成する。


ところが、性別を変更してから十七年後――気持ちが崩れ落ちるような感覚が起きるようになった。パニックの発作だ。そしてカウンセリングを受けたところ、性同一性障碍ではなくPTSD(心的外傷後ストレス障碍)だと診断される。


クレーメルは、十代の頃に父親から性的虐待を受けていたのだ。


「今になって振り返ってみると、『もし女性の身体でなければレイプされなかった』という気持ちから複雑な心境になっていただけだったと判りました。」


そうして現在は女性を自認し、トランスしたことを後悔している。


男性ホルモンを辞めたものの、顔立ちは男性的なままだ。頭にはハゲまで出来ている。当然、切り取った乳房や子宮が元に戻ることはない。


このような事例は日本でも起きている。


二〇二〇年―― Amema TIMES が、性別適合手術を受けて後悔した女性のことを報じた。

https://times.abema.tv/articles/-/8629191


現在、彼女は三十代である。性別を変更したのは八年前のことだ。二年以上をかけ、男性ホルモンを打ち、乳房と子宮を摘出し、戸籍を変えた。性別変更を急ぐあまり、RLE(実生活経験)が不十分なまま移行へと踏み切ったという。


戸籍を変更し、社会へ出て働き始めた。しかし、違和感が募り始める。彼女は「男性」になろうとしたが、できなかったのだ。性的指向も男性のみだった。やがて男性として扱われることが苦痛となる。性愛の話でも、女性を好きな振りをしなければならなかったという。


――長年の違和感は、「男性になること」で解消されるものではない。


そう気づくまで、時間はかからなかった。


彼女は、ネガティヴなイメージを幼い頃から女性に持っていたという。


母親は、ヒステリックになりながらも子育てに専念していた。そんな姿が価値観に影を落とす。「子供を産むと、女性は子育てが第一になる。男性から影響を受け、全てが変わってしまう」。そこから、女性という生き物が汚いというイメージを持つようになったのだ。


中学二年のとき不登校になる。


周囲の少女たちは、化粧をしたり、男性と交際したりしていた。それに対し「ちょっと違うな」「なんだか気持ち悪い」という感情を抱いたという。なので、化粧もせず、ボーイッシュな格好を好んだ。


性同一障碍については『3年B組金八先生』で知る。その時から、本を読んで情報を集めだした。


女性としての生きづらさを感じ続けて大人となり、二十代の時、実際にFtMと出会った。そして、治療をすれば男性として暮らせるのかなと考え始める。


間違えた原因は二つある。一つは、RLEが不十分だったこと。もう一つは、思春期に不登校となってしまい、友人関係や恋愛を通じて性自認の問題に向き合うきっかけを逃したことだ。


やがて彼女は女装して生活するようになり、再度の戸籍変更に踏み切る。


戸籍を変えるためには「二人以上の医師による診断」が必要だ。性別を戻すため、かつて診断を下した医師に「誤診だった」と認めさせることは難しかったという。


女性に戻った今も後悔は絶えない。何しろ、性的指向は男性だけなのだ。しかし、女性としての機能はすべて失ってしまった。また、男性ホルモンの影響で声も低くなっている。なので、女子トイレでも声を出さないよう気を付けなければならない。


また、二〇一七年・十月三十日の朝日新聞には、「性別変更 元に戻せない」「思い込みで決断 後悔する人も」という記事が載っていた。


そこで取り上げられていたのは四十代のMtFだ。


幼い頃から、彼は吃音に悩んでいた。二〇〇〇年ごろには疎外感を抱えていたという。そして、GID当事者と交流する機会を得る。「自分たちの存在を認めないのはおかしい」と訴える姿がとてもポジティヴに写った。これがきっかけで、自分も性同一性障碍だと考えるようになったという。結果、二〇〇三年にタイで性別適合手術を行ない、二〇〇六年に戸籍変更が認められる。


だが――すぐに後悔に襲われた。


というのは、男性だった頃に見つかった仕事が見つからなくなったためだ。賃金も女性のものしか得られなくなった。記事では、「精神的に不安定な状態で申し立ててしまった。このまま生きるのは非常に苦痛で何とか元の性に戻りたい」と語っている。


――雇用や賃金が少ないから男性に戻りたい。


女性をバカにしている。


しかし、そこまで追い詰められていた何かがあったのかもしれない。


どうあれ、賃金や雇用の格差を是正するために立ち上がるのではなく、男性に戻りたがるあたり、この人が男性でしかなかった証拠だろう。

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