8.ゲイは自殺率が高いだって?
二〇〇五年――宝塚大学の日高
結果、5731人の男性当事者が回答した。そのうち、66%が「自殺を考えたことがある」、14%が「自殺未遂をしたことがある」と答えた。
二〇〇九年――この研究結果は、日本の同性愛者が差別的状況に置かれている証拠として国際連合人権理事会に提出される。
二〇〇八年にも、大阪・ミナミの繁華街で日高教授は街頭調査を行なっている。すると、同性゠両性愛男性が自殺を図る確率は、異性愛男性の六倍という結果が出たという。
二〇一六年にも同様の調査を日高教授はネットで行なった。回答した性的少数者は1万5000人だ。そのうち七割以上が、職場や学校で「差別的な発言」を経験したという。「ホモ・オカマ・おとこおんな」などの言葉をかけられた経験は64%、服を脱がされた経験は18%もあった。
――は?
たとえ異性愛者であったとしても、私の書いてきた文を今まで読んできた人ならば、「絶対に
前回のエピソードで紹介した厚生労働省の調査結果を思い出してほしい。
ここ三十日の間に精神的な不調があったかという調査で、ゲイは、異性愛者より一割ほどネガティヴな結果を出した。異性愛者は40.6%、ゲイは49.6%――9%の差だ。
しかし、9%多いだけで自殺未遂率が六倍になるとは思えない。
【
https://kakuyomu.jp/users/Ebisumatsuri/news/16816927862340269294
また、「性的少数者であることをネタにした冗談や揶揄」を「職場で見聞きした割合」は、ゲイは27.4%。そのような経験に「自分自身が遭った割合」は11.9%である。「学校」を除外した数ではあるが、「七割以上」にはあまりにも遠い。
【今の職場で見聞きしたハラスメント・自分が経験したハラスメント】
https://kakuyomu.jp/users/Ebisumatsuri/news/16816927862340101034
正直なところ、日高教授の調査にどの程度の透明性があるか怪しい。
ところで、異性愛者の自殺未遂率・自殺念慮率はどうなのだろうか。
二〇一八年――自殺未遂率・自殺念慮率について、公益財団法人・日本財団がネットアンケートを行なった。結果、十八歳から二十二歳の若年層の3126人が回答する。そのうち、過去一年間で「本気で自殺したい」と考えた者は30%、過去一年間で自殺未遂に及んだ者は11%であった。
自殺未遂率11%というのは驚きだ。この調査が正確なものならば、若年層の
そして、この結果は、「同性゠両性愛男性の14%が自殺未遂を経験した」という日高教授の調査結果と3%しか違わない(ただし、自殺念慮については、同性゠両性愛男性の方が40%多い)。
もちろん、二つの調査はそれぞれ違う条件で行なわれたものだ。何しろ、日本財団の調査は「十八歳から二十二歳まで」「過去一年間に」という条件がついている。もし、この条件を撤廃した調査を行なった場合、比率はもっと高くなると予想される。
ただし、日本財団の調査にしろ透明性は不明だ。何しろ、日高教授が行なった調査方法と同じく、インターネットを通じたアンケート調査である。
日高教授の奇妙な研究について、「実感とかけ離れている」と故・ジャック氏も指摘する。
アンケートが行なわれたのは、Reach Online というサイトだ。ジャック氏が覗いたところ、アンケートには、「性的指向」とか「LGBT」とかいう言葉が散りばめられていた。二〇〇九年の時点では、当事者でさえ全く一般的ではなかった言葉だ。
そのような言葉をちりばめた結果、アンケートに回答したのは、LGBT運動に傾倒する人々ばかりになってしまったのではないか。
私も、年上のゲイたちに訊ねたのだが、「LGBT」や「性的指向」という言葉を知ったのは二〇一五年以降であるという。
ジャック氏の指摘どおり、アンケートに答えた者はLGBT活動に傾倒していた者が多かったのだろう。そんな彼らの中には、同性愛者であることで悩みを抱えた人が多かったに違いない。
しかし、実際に自殺未遂を起こすほどの悩みでもなかった――だからこそ、自殺未遂の割合は、日本財団の調査で見られた自殺未遂の割合と大して違わなかったのではないか。
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