第13話 今までで一番良さそうだけれど

 160度に設定したオーブンで、まずは10分焼く。


 次に、オーブンに入れたまま温度を200度に設定し、15分焼く。


 ここまではアルミホイルが型を覆っているので、生地の状況か分からない。上手くいっているのか、そうでないのか。しかし、オーブンからは少しずつ良い香りがして来た。これはもしや、上手くいっている……?


 そんな期待を抱きながら15分が経過した後、一旦型をオーブンから取り出し、上に被せてあったアルミホイルやオーブン用シートを外す。


 すると真っ白い生地が姿を現した。生地はふんわりと膨らんでいて、良い香りがする。


 これはいい感じかもしれない、と思いつつも、今までの失敗があるので出来上がるまでは喜ぶことができない。私は冷静を保ちながら、型を再びオーブンに戻し今度は200度に設定して15分焼く。


 最後の焼く工程でアルミホイルを外すのは、生地に焼き色を付けるためだ。もし、最後までアルミホイルを被せたままで焼けば、白いミニ食パンが出来上がる。それはそれで素敵だが、まずはきつね色に焼けた香ばしいパンが食べたいので、15分間、使った道具を片付けながら待った。


 そして、ついに。


 ――チンッ!


 古びたオーブンが、全ての工程が終了した合図を告げる。


 私はいそいそとオーブンミトンを手にはめ、型を取り出す。表面は薄っすらときつね色になっていた。それを見ながらも一旦テーブルに置き、オーブン用シートを引っ張って生地を持ち上げ、網の上に載せる。


 なんか……いい感じのような気がする……⁉


 焼き色が付き、美味しそうな香りもする。触った感じも今までで一番ふわっとしている。中身が半生の感じもない。もしかすると成功したのだろうか?


 そう思って、熱々の出来立てを食べてみる。


 うーん……?


 確かに、今までで作ったなかで一番「食パン」に近い。


 しかし、目が粗い。食パンというときめの細かさが売りのはずだ。


 また食感は、どこか米(ご飯)を感じてしまう。それがダメ、というわけではないが、パン屋さんの米粉パンはもっと「パン」だった。それは小麦粉が入っているせいだろうか? しかし、レシピに掲載されている出来上がった写真を見る限り、米粉でも「パン」の再現が出来ている。だったら、何が原因だったのか。


 それに、生地の下の部分がやたらとカリカリしすぎている。まるでその部分だけラスクのような固さがある。これに関しては、オーブンに入れたときの位置が問題だろう。次は加減しなくてはならない。


 前回よりも格段に良くはなったが、課題はまだまだある。成功するまでにはもう少し時間がかかりそうだ。

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