第2話 馬とネギ魂
この国を出てネギを探す旅に出る。そうと決まればルードの行動は早かった。
まずは旅に出る為には食料や着替えの服、移動のための馬や他の国の情報。
とにかく思い付くだけでも色々な物を買う必要があった。
ルードはまずは情報だと思い本屋に向かう。
「こんにちは〜」
「いらっしゃい」
中に入るとメガネをかけたおじいさんが一人、カウンターで本を読んでいた。
「何をお探しで?」
「実は旅に出ようかと思いまして、それに関する本と出来れば地図が欲しいんですが」
「了解しました。こちらにどうぞ」
メガネおじいさんはカウンターから出てきてルードを誘導する。ルードはおじいさんについて行くと、そこには旅に関する本から魔物についてや植物の本、体術の本や種族についての本などが置かれていた。
「地図は売っていませんが地域による特徴を書いた本はございます。そして旅についての本もこちらに」
「ありがとうごいます!二つとも買わせてもらいす!」
「了解しました」
ルードは種族に関する本も少し気になったが、今はどれほどお金がかかるか分からないので後回しにた。
「お支払いは現金でしょうか?それともカードでしょうか?」
「カードでお願いします」
「かしこまりました」
突然の現代技術!?と、感じるかもしれないが少し違う。
これはこの世の大抵の人が持っている『ステータスカード』と呼ばれるものだ。簡単に『カード』と呼ばれている。
ここには名前通ステータスが書かれており、『名前』『種族』『年齢』『作成国』『犯罪歴』が記載されている。
因みにルードのステータスカードはこんな感じだ。
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名前:ルード 種族:人族 年齢:19歳
作成国:『フーラウ』
犯罪歴:なし
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当たり前だが、犯罪歴は無い。
そしてステータスカードとは別にその人自身の『ステータス』も存在するが今はいいだろう。
このカードは十六歳。つまりこの世界で成人した時に口から提供されるカードだ。
これは身分証にもなり、そして国が運営する銀行でお金を出し入れしたり給料を貰うことが出来る。
そして今のように魔法道具を使って買い物もできるのだ。
「ありがとうございました。良き旅を……」
「はい。ありがとうございました」
寄り道せず家に帰ったルードは早速本を読む。
そしてそこに書かれている内容をメモし、今の時間から空いているだろう店に向かう。
「こんにちは〜」
「はいー、どうしましたか?」
ここは馬を販売、もしくは借馬する所だ。もちろん今回ルードは馬を買うためにやってきていた。
「馬を買いに来たんですけど、値段と時間ってどれぐらいかかりますかね?」
「そうですねー。お客さんは馬に乗ることは出来ますか?」
「ええ、何度か馬で隣町まで行ったことはありますね」
「それなら大丈夫ですねー。馬を選ぶ時間はお客様次第ですが、サドルをお客様専用に調節するとなりますと、丸一日かかります」
「なるほど。今から頼めば明日の朝には出来てます?」
「はい、大丈夫です」
「ならお願いします!では値段は?」
「旅を目的とするならば速さより体力の方が必要となります。そうなりますとー、少なくとも約50万エルしますね。サドルに関しては一万エルです」
『エル』は全世界で共通するお金の単位であり、日本円で言うなら1エル=1円である。
「50万エルですか……サドルは頼むとして、馬を見せて貰ってもいいですか?」
「了解しましたー」
ルードは店員さんについて行くと何十頭も馬がいる馬小屋に着く。
「この小屋にいる馬は全て旅に向いている馬になっておりますー」
「ありがとうございます」
ルードは一頭ずつ馬を見ていく。
特に馬に関してルードに知識がある訳では無いが、彼なりに自分に合った馬を探す。
(う〜ん、やっぱりどの馬がいいとかわかんないな……ん?あれは……)
ルードは少し諦め気味に周りを見渡す。
すると小屋の奥に他の茶色がかった黒い馬とは少し違い、むしろ紫色に近い黒い馬を見つける。
「すいません。あの馬は……」
「ん?あー、彼は……いや、彼女だったかな?所謂『魔馬』と呼ばれる魔物の血を引いた馬ですねー。見た目が少し魔物寄りで人気はありませんが、通常の馬と比べて速力、体力、力強さのどれをとっても上回りますー」
「なるほど、お値段は?」
「500万エル……と言いたいところですが、この際100万エルでいいですー」
「え!?いいんですか?」
ルードは500万と言われた瞬間は諦めかけたが、100万ならギリギリ手が届くと希望を抱く。
「えぇ、実はこの馬訳ありでしてねー。兎に角、一度近寄ってみてくださいー」
「分かりました!」
ルードはルンルン気分で魔馬に近づく。
そして途中で店員さんが止まったのに気付かずそのまま魔馬に近づくと……。
「ブルルン!!」
「うわぁぁ!?」
「ありゃー」
近づいてきたルードを魔馬は不機嫌そうに鼻息を鳴らす。
基本的に戦闘経験もないただの一般人であるルードはその鼻息に軽く吹き飛ばされ尻もちを着く。
「この魔馬はですねー。明らかに人間嫌いで、気に入らない人間はこうやって鼻息で吹き飛ばし、無理やり乗ろうとしたら大暴れする厄介馬でー、しかも餌も良い物しか食べない。正直扱いに困ってるんですよー」
「な、なるほど」
馬も馬なりにプライドがあるのか、魔馬は自分より弱いやつは乗せない!と言わんばかりに鼻息を強める。
(だけど俺にはお前が必要だ!俺のネギ魂舐めんじゃないぜ!)
ルードはネギの為なら世界一周だって出来る。というか、もはや世界一周をするつもりだ。
それならそんじゃそこらの馬より、頑丈な魔馬の方がいいに決まっていた。
「ブルルン!!」
「うっ……ま、負けるか!いいか、俺はある物を探して世界一周する!だから俺についてこい!お前が必要だ!」
「……」
さらに近づこうとするルードに鼻息で飛ばそうとするが、ルードは根性で何とか耐える。
そして何とか魔馬に手が届く範囲に辿り着き、魔馬の顔に手を置いて目合わせてルードはそう言い放つ。
数秒か数分か、ルードと魔馬と見つめ合う。お互いに目を離さない。少なくともルードから離せば魔馬は認めてくれないだろう。
「ブルルン」
「わっ!?な、なんだ?!」
魔馬は顔を上げるとルードの髪の毛を口先でフサフサしては軽く甘噛みし始める。
もしかしたら魔馬なりの愛情表現なのかもしれれない。
「ま、まさかあの暴れ馬が懐いた……?!自分から言い出したことですけど衝撃ですねー……」
店員さんの驚きの声を聞きながら、ルードは馬とじゃれつくのだった。
前世の記憶を取り戻した男は『ネギ』を求めて旅に出る 覇翔 ルギト @shoubook1012
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