目の前にある紛うことなき「罪」。
罪は確かに罪として、断ぜられなければならない。
それは間違いない。間違ってはいけない。
ただ、その断じ方、罪に苛まれるものへの救済の在り方は、実は形に現れる罪ほどに、単純ではない。
家庭という殻の中で生まれた罪であれば、ことさらに。
複雑にしてしまうのは愛情だ。
愛情は時に、当事者たちでしか共感できないような不条理な変容を見せる事がある。
だから人は誰も、愛情に翻弄される。
主人公も本来なら、その複雑さ、不条理さを鑑みて、少女の前をただ通り過ぎたはずだ。
それができなかったのは、リストラという、人生にぽっかり空いた暗い穴にはまってしまっていたからではないだろうか。
それが主人公が行った偽善と言うエゴを生み、そこにまた、小さな罪が重ねられた。
ではその罪もまた、断ぜられなければならないのか。
少なくとも私は、そこに少女を癒した、暖かな吹き溜まりがあったと思いたい。
冷静でいられなかったこその産物が、そこにあったと。
だから、あるべき罪なんだと。
その絶妙なバランスの出会いを感じさせて、考えさせてくれる、何が本当に「正」なのか、問いかけてくる物語。