21 鈴の蕾は龍に抱かれ花ひらく ~迷子宮女と美貌の宦官の後宮事件帳~
【タイトル】
鈴の蕾は龍に抱かれ花ひらく ~迷子宮女と美貌の宦官の後宮事件帳~
https://kakuyomu.jp/works/16816700429146389370
【作者】
綾束 乙 様
【ジャンル】
恋愛
【あらすじ】
鈴花が龍華国の後宮の宮女になったのは、奉公に行ったまま行方不明になった姉・菖花を探すためだ。ただ、鈴花は方向音痴でドジばかりしてしまい、周囲の人間に迷惑をかけてしまうことが多い。宮女たちからは蔑まれ、手ひどい扱いを受けていた。そして、鈴花にはひとつ他の人とは違う部分がある。人が纏っている「色」――「気」を視覚できるということだ。ある日、鈴花は後宮内で道に迷っていたところを美貌の宦官・珖璉に救われるが、「気」が見えることを知られてしまう。通称「見気の瞳」が現在後宮で起こっている連続宮女殺人事件の手掛かりになると踏んだ珖璉は、鈴花の力を利用すべく彼女を彼付きの侍女に召し上げることとなる。
【魅力】
この作者様の魅力や特徴が凝縮された、スリリングであり甘々な恋愛小説だと思います。物語としての展開に安定感があるとでも書けばよいのでしょうか、宮女の連続殺人事件という凶悪な要素を取り扱っているにも関わらず、読みやすい文体でありキャラクターはとっつきやすくコミカルでもあり、気づけば最後まで読んでいる。読了感としてはそんな所感です。
そして、恋愛色という意味においては十分すぎるほどの糖度を摂取できます。鈴花はドジっ子であり迷子、さらに食いしん坊属性も付与されるという色恋にはかなり疎そうな、あるいは初心そうな女性です。それに対する美貌の宦官・珖璉という取り合わせに一種のアンバランスさを感じます。貧しい食事ばかりしてきた鈴花に美味しいものを与える珖璉。鈴花の純粋な幸せそうな顔はさぞやキラキラしてるんだろうなと微笑ましくなりますし、それを怜悧な印象を受ける珖璉が与えているというのもミスマッチなようで面白いです。絵にしたらまるで大人と子供のような精神年齢の違いがありそうなのですが、そんな二人が事件を追いかけていく中で様々な思いを育んでいく姿は中華風じれじれ恋愛ファンタジーの名にふさわしいものだと思います。
【気になった点】
非常に個人的な感覚で大変恐縮なのですが、主人公・鈴花の成長面・能動的な動きの印象が薄かった、というのが読了中、そして読了後の感想でした。この辺りはキャラクター造形というか、個人の好みの問題もあると思います。姉を探すために後宮に飛び込んだり、終盤の行動などは彼女が前に進もうと動いた部分なのですが、物語の基本構造として、彼女がサポート的な役割を担いすぎているため、積極的な部分の成果を実感できなかったのかもしれないです。鈴花が「見気の瞳」で異常を見つけ、珖璉が手掛かりを集めていく。役割上そのパターンが主になるのは仕方のないことですが、そのせいか鈴花が傍観者のように見えてしまい、序盤の役立たずと周囲に罵られていた構図から大きな変化を感じ取りにくい……のかもしれません。
【その他】
「呪われた龍にくちづけを」シリーズと同じ世界観とのことで、二巻以降も読まねばと鼓舞しております。
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