第5話 ようこそ、宿屋へ。一晩6000ゴールドになります

 扉を抜けるとそこは、城だった。

 別の国だあああ! アローマだ。


「格闘技場ありますよ! いってみましょうよ!」

「好かぬ」

「え?」


 聞き直す。


「我は格闘などという無粋な行い、好かぬ」

「え?」


 意味が分からず聞き直す。

 全身筋肉でできているのかと思うような男が、いうセリフ?


「我は知的タイプだからな……少し疲れたな、宿を取るか」


 突っ込みどころ満載だったのだが、ついに一番聞きたかった言葉が聞けたので黙ることにする。


 城の中に入ると、ヒゲの男が突っ立っていた。


「ようこそ、アローマへ」


 俺はフレンドリーに笑みを浮かべ、尋ねる。


「ここで宿ってどこにありますか?」

「ようこそ、アローマへ」

「あれ? 聞こえなかったですか? 宿ってどこにありますか?」

「ようこそ、アローマへ」

「……」


 首をかしげる。

 男の目の前で手を振る。


 どうも男はどこかここでない場所を見ているようだ。

 あきらめよう。



 自力で宿を探し出す。

 宿のカウンターで看板娘がにっこり微笑む。


「ようこそ、宿屋へ。一晩6000ゴールドになりますが、お泊りになりますか?」


 その値段を聞いて、吹き出す。


「ちょ、ちょっと待って。高くない?」

「ああ、お二人様ですね。120000ゴールドになります」

「いやいや余計上がってるから。だいたい俺たちの出身地じゃあ、6ゴールドくらいだよ?」


「……ではお二人は一つのベッドで、お楽しみですか?」

「それだけは嫌」


 あきらめて踵を返す。

 なんだ、この国は。全然話通じないじゃないか。

 憤慨しつつ宿を出ると、あの筋肉男が姿を消していた。

 どこいったんだ、あいつ。


 いや、チャンスだな。

 ようやく冒険ができるチャンスだ。

 きょろきょろと辺りを見回す。


「あった!」


 宿の裏にあったツボを掴み、投げる。

 がしゃん。


 という音がしてツボは割れ、中から何が出てきた。


「なんだ、やくそうか。しけてるな」


 舌打ちして次を探そうと歩きだしかけて、ツボが割れる音を聞きつけた宿の看板娘がこちらをみやった。


「きゃあああああああああああ! どろぼう!」

「え?」


 だめなの?

 ツボ割っちゃ。


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とある名前の出せない有名ゲーム世界にぶっ壊れ魔法使いが最初から仲間だったら ゆうらいと @youlight

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