≪護≫5

 ジェンガを3ゲーム目までやった。

 塚原さんと、キャサリンさんの初恋の話を聞くことになった。

 塚原さんは、小学校の担任の先生。キャサリンさんは、なんと、メガネが初恋だったらしい。てれるメガネを見てしまった。

 隼人さまの話とはちがって、どちらも、心がほんわかした。

 隼人さまの人生は、やっぱりちょっとおかしいんだなと、あらためて思った。


 ゲームの後は、自由時間になった。

「ひまですか?」

「ひまだね」

 猫は、またごろごろしている。


 せっかくなので、庭の仕事を手伝ってもらうことにした。

 猫には雑草とりをまかせて、僕はピーマンの収穫と、そら豆の種まきの準備をすることにした。

 こういう作業にも、すっかり慣れてしまった。

「背中、大丈夫ですか」

「へーき。施設、ほんとに行くの?」

「行くつもりです。来月にでも。

 引っぱってでも、つれて行きますよ」

「ガチ執事じゃん。護は、本物の執事になるのかもね」

「ならないですよ。とりあえずは、大学生になりたいです」

「この家に働きにこなかったら、中途半端なフリーターだっただろうね」

「でしょうね。とった雑草は、このごみ袋に入れてください」

「はいよっと」

 猫は、膝立ちになって、手近にある雑草を引っこ抜いていた。

「服、汚れますよ」

「いいんだよ。今日、泊まるから」

「そうなの?」

「うん。いい?」

「僕に許可をとろうとしないでください」

「隼人は、オーケーでしょ。聞かなくても」

「いや。そこは、聞きましょうよ」

「そうだね」


 猫と話しながら作業していたら、あっというまに、一時間以上たっていた。

 外の水道で、汚れた手を洗った。

「戻りましょうか」

「うん」

「ありがとうございました」

「いいってことよ」


 家の中に入ると、いいにおいがした。

「あまーい、におい」

「なんだろ。ホットケーキかな」

 居間を通って、台所に行った。僕の後ろから、猫がついてきた。

「塚原さんだね」

 びっくりした。てっきり、隼人さまかと思っていた。

「護くん。台所、お借りしてます」

「すみません。ありがとうございます」

「これ、三時のおやつにと思って。隼人せんぱいは、お掃除してます」

「わかりました。ミャーさん。あとは、好きなようにしてて」

「はいよー」

 うなずいた猫が、畳に向かっていく。寝るんだなと思った。

 背中が痛いのかもしれなかった。

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令和モラトリアム★ボーイ -貧乏性の御曹司は、DIYでリフォームした家で年下執事と暮らしながら、本当の自分を探す- 福守りん @fuku_rin

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