第11話 とある家族
「ここは、お城なのお父様。」
「ここは、タウンハウスと言って、王都にある家なんだ。領地の都にあるマナーハウスと呼ばれる屋敷はもっと大きいぞ。本当は社交シーズンが終わる秋になったらそちらに移るが、ソフィの学園があるからな、行くのは冬休みになってからだ。そっちこそ、お城だ。」
どんな上級貴族でも事業に成功した富豪の貴族でもタウンハウスは敷地が狭く、その分二階、三階建てになっている事が多い。しかし、ホーガン家は建国の際に王より下賜された広大な土地が王都にもあり、その立派さはちょっとした貴族の田舎のマナーハウスと規模が変わらなかった。
「お母様、今日から私たちここに住むのね。」
アレクサンドラは娘ににっこりと笑う。
「アルフレッド、部屋に入れる支度はまだなのか?」
ウォルターの声は広いサルーンに響き渡る。そこにクララとエドワードが到着した。
「父上。」
耳に響いてくるクロウタドリのような声は、その見目と共にキレイだと思った。
「あぁ。サンディ、ソフィ。あれが、娘だ。」
お父様がそう紹介した女性は、私が履いた事もないような高いヒールの靴で音も立てずに近づいて、絵本のお姫様みたいにカーテシーをした。
「ホーガン公爵家クララでございます。以後、お見知りおきを。」
「お父様、この方がお姉様なの?」
「あぁ。」
私がお母様を見ると、お母様はいつものように優しく笑ってくれた。
「私のお姉様なの。絵本のお姫様みたい。」
私がお姉様の手を取って握ると、お姉様は私の顔を見てくれた。
「せっかくの二人きりの姉妹ですもの、仲良くして下さいね。お姉様の瞳、とっても綺麗な黄緑色なのね。うらやましいわ。私はお母様に似てブラウンだから。お父様も綺麗なブルーだから、お姉様もお母様に似たのね。あっでも、お顔や髪の色はお父様にそっくりね。綺麗なブロンド。こんな綺麗なお姉様が出来て本当にうれしいわ。」
私が振り返ると、お父様もお母様も優しく笑う。
「紹介が遅れましたが、こちらは、コンラッド伯爵家三男のエドワード様です。」
「申し遅れました。コンラッド伯爵家エドワードでございます。ホーガン公爵、ご夫人、ご令嬢どうぞ、お見知りおき下さい。」
お姉様と、エドワード様は本当にお姫様と王子様みたい。絵本の世界の人みたい。
「ちょうど、ガゼボに甘いものが用意してございます。お部屋が整うまで、是非そちらでお待ちくださいませ。メイドがご案内致します。」
お姉様がそう言うと、どこからともなく女性が現れて、私たちをお庭まで案内してくれた。
ある公爵令嬢の話 赤井タ子 @akai-tako
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