第9話
「誰だね、キミ達は?」
少女のクリクリとした大きな目が、晴香と美咲を交互に見比べる。
「え? あ! アタシ、美咲っていいます。こっちは──」
「晴香です! 1年です!」
二人の簡単な自己紹介に、少女は、フムと頷いた。
「フム……、ミサキとハルカだな。ワシ覚えた! ……ところでなんでこんな所に──」
少女の言葉を、階段を大人数が駆け上がる音や、下の階からの怒声が遮る。
恐らく二階で二人のことを先輩達が探し回っているのだろう。
少女はまた、フムと呟くと、腕を組んだ。
「察するにキミ達、逃亡者の
凄く察しのいい小学生だ。美咲と晴香は激しく頷く。
「はい! そうなんですよ! 部活動紹介があるから体育館で並んでたら、いきなり先輩達に囲まれて……、狩りをするとか言い始めて……」
美咲の説明に、少女の顔がみるみる険しくなる。
「金剛寺……、優生思想のサディチト野郎め。計画には聞いていたんじゃが、まさか実行するとは……」
何やら思い当たる節があるらしく、少女は顎を引きブツブツと独り言をしばらく並べたいた。
そして再び青色の瞳で二人を捉える。
「ここにいては危険じゃ。ここから逃げるとしよう!」
「逃げるってどこに?」
晴香の質問に、少女は自分の出てきたロッカーの中を指さすことで答えた。
誘導されるように、二人は中を覗く。
そこには人がギリギリ通れそうな、丸穴が存在していた。
秘密の通路的な展開に、晴香の瞳が輝く。
「何この穴!」
「ムフ〜! すごいじゃろ! だが、驚くにはまだ早いゾ諸君! ささっ、ついてきたまえ!」
少女はほふく前進で、その穴に入っていく。
足の先まで穴に消えたあと、向こうから「入っていいゾぉ」と少女の声が聞こえた。
「ほほぉ!! スゴいよ! カラクリ屋敷みたい!」
「ハルちゃん、めっちゃテンション高いじゃん」
「私、先入っていい? 先入るね!」
「あ、うん、はい」
フンフンと鼻を鳴らしながら、晴香は穴の中に入っていった。晴香が通り終え、それに続くように美咲も穴に入っていく。
穴の分厚さは10cm程しかなく、あっという間に穴の向こうに到着した。
穴の向こうは、部屋だった。広さは教室の半分もない。そして何より扉がない。扉のあるはずの左側には、のっぺりとした白い壁があった。出入口はどうやらこの穴だけらしい。
部屋に入ってすぐ美咲を出迎えたのは、穴の目の前に3つ横に並べられた理科戸棚だった。機械の動物(?)が隙間なく飾られていて、ガラス越しにそれを確認できる。
「それはワシのコレクションじゃ。 カッコイイじゃろ!」
右から聞こえた少女の声へ、美咲は視線を向けた。
そこには職員室に置いてあるような事務机が、窓に背を向けるように置いてあり、そこに少女はドカッと座っている。
さらに事務机の前には、季節外れのコタツが設置されて、そこには左右に対面するように座る男女がいた。
二人の手には、Swi○chが握られている。
男は熊のようにでかく、四角い顔は無愛想だ。
女は猫のような印象で、カールのかかったサイドテール。ゴテゴテに盛られたネイルが一際目を引くだろう。
そして二人とも当たり前のように軍服を着ていた。
入ってきた晴香と美咲にやっと気がついたのか、男女は顔を上げる。
「あらぁ! コンニチワー、
そう言い、ギャルギャルしい果林は目の前の男の頭をパタパタと叩く。
男は嫌そうに顔をしかめた。
「分かってるよ姉さん。言われなくてもするさ」
ゴツイ見た目とは裏腹に、声は中性的でよく透っていた。男の顔がこちらを向く。
「どうも、
晴香と美咲は、それに軽い会釈で答えると、少女にしたような軽い自己紹介を行った。
それが終わりふと少女を見ると、小さな全身を使い事務机の上によじ登ろうとしていた。
「うん……しょ……どっこい……しょ……」
登り終えた少女は、机の上で仁王立ちすると大声で話し始めた。
「ようこそ二人とも! このワシ、
レーニナはそう言い、両手を広げる。
「そして、ようこそ同士諸君! 我が部……革命部へ!」
高らかに声を上げるレーニナの胸に、赤い星がキラリと輝いた。
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