第24話 戦後処理
肉を貫く音に、目を逸らしていたルイスやロッド、将軍は歯を食いしばって目を閉じた。
そして、イミアに目を向け、ギョッとした。
「殿下!?」
クライはイミアを背後から抱きしめ、イミアと自分とを剣で貫いていた。
「何、やってる、ん、です……」
イミアが声を振り絞ると、クライも声を振り絞る。
「愛してる、って、言った」
そして、どさりと倒れ込んだ。
イミアの中で、神は狂王を抑え込んでいた。
狂王はたくさんの無念を取り込み、力を増してはいたが、馴染むまでにはいたっていなかったのが幸いして、どうにか抑え込めた。
「貴様!貴様!貴様!」
「ここまでです」
「ギャアアア!!」
剣が差し込まれ、それを神が力で包むと、眩しい光になる。そしてその光が狂王を貫き、狂王はちりじりになって消え去った。
それを見届けた神は、ふと剣を見た。
「これは……」
ランギル帝国は滅んだ。実質的には滅んでいたも同然ではあったが、キチンと地上から消えた。
攻め込まれたムフタングス公国とオリストマン王国には気の毒だが、賠償も不可能だった。それでも、元ランギルの国土を3国で分割して納得するしかなかった。
生き残っていたミリスや貴族などは罪を犯していない者はなく、大陸連盟主導の裁判にかけられる事となった。
そうして、戦後処理が慌ただしく進められて行く。
「だから、ここにきっと遺跡が埋まっている筈ですって」
「だからって掘り進めるのは危険過ぎるだろう。地盤が緩いんだぞ、この山は」
クライとイミアは、熱く言い合いをしていた。
あの日、クライが自分諸共イミアを刃で貫き、神がイミアに入って来た刃を自分の力でコーティングして狂王を貫き、狂王は滅せられた。剣は間違いなく心臓を貫いており、2人は死ぬはずだった。
しかし神のコーティングは、イミアとクライという想定よりも多い命のせいで強化され、剣を抜き去るまで刃を守り続けた。おかげで肉体に傷を付ける事もなく済んだのだ。
奇蹟だ。
そして、今に至る。クライとロッドは王の命令で戦後処理にも駆り出され、落ち着いて来たので職場に復帰した。
イミアはルイスと一緒に完全に狂王が滅せられている事を確認した後、戦地跡を回って鎮魂のために祭祀を執り行い、ようやく職場に復帰した。
そして、恒例の意見のすり合わせである。
「いやあ、こうでないとね」
ああでもないこうでもないと言い合う2人を、同僚達はニヤニヤとして見ていた。
「いやあ、凄いよね。自分ごと刺したんだろ。できないよ、なかなか」
「愛だね」
「愛の奇蹟よ」
クライとイミアにロッドがお茶を差し出す。
「まあ、落ち着いたらどうです、2人共」
それで2人はお茶を同時に啜った。
「はあ。美味しい」
「そうだ。殿下、イミア。陛下からの伝言です。結婚式があるから、ケガなんかしないようにそれまで遺跡調査は禁止だそうです」
「ええー!!」
イミアとクライは声を揃え、ロッドも交えて、同時に笑い出した。
女神の代理人の恋愛事情 JUN @nunntann
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