ハッピーバースデー●●!

 大きな台風がやってきました。

 なんだか温泉をのんびりめぐっていたのか、ママチャリよりもゆっくりしたスピードで九州のあたりをうろうろしていたようです。

 何日もすごい雨と雷が続いて、しょうたくんのお家のあたりにも避難勧告が出ました。

 でも、避難所に指定されている学校は川沿いの崖の上にあるので、高台のしっかりした地盤に建っているお家の方がまだ安全そうです。

 しょうたくんはどきどきしながら家族と非常持ち出し袋を抱えて本を読んでいました。


「あとどのくらいでおさまるかな?」


「う~ん、気象情報見てみるか。……あ」


 スマホの天気予報アプリを開いたつぐ兄ちゃんが固まりました。

 すぐ横からみつたか兄ちゃんが画面をのぞき込みます。


「なになに……うわぁ!」


 みつ兄ちゃんも固まっています。珍しく、いつものうさん臭い笑顔が消えてますよ。よっぽどびっくりしたんでしょうね。


「どうしたの?」


「あ、うん。台風10号は熱帯低気圧に変わったんだけどね……また台風ができたみたい」


「ええ!? ……ほんとだ、ヤギだって。牧場でおとなしくしてればいいのに」


 思わず画面をのぞき込んださくら姉ちゃんもびっくり。


「台風10号が消えてすぐ産まれたってことは転生!?」


 それを聞いたかずひろ兄ちゃんがよくわけのわからないことを言いだしました。


「台風、うまれたの?」


 首をかしげるしょうたくん。


「そうだよ。台風10号はもういないんだ。代わりに11号のヤギさんが生まれたんだよ」


「そうか。ハッピーバースデーだね」


 しょうたくんはハッピーバースデーのお歌を歌うと、兄弟たちも一緒に歌ってくれました。

 何だかみんながヤケクソ気味になっていたのは、たぶんおかあさんの気のせいです。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

しょうたくんのまいにち 歌川ピロシキ @PiroshikiUtagawa

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

同じコレクションの次の小説