正直に話せば想いはきっと伝わるから＝言葉を重ねれば重ねるほど離れていくこの想い

エピローグ 離れていく想い

　バイト？　私語でクビになったよ。いやあ、バイトでクビって本当にあるんだね！　俺、てっきり漫画の中だけの話かと思ってた。法律的にどうなんだよ！　って、啖呵切ってやったよ。そうそう。口が勝手に喋ってた。結果は変わらなかったけどね。

　だから躑躅ヶ谷さんに言っとかなきゃかなあ。俺もういないし、バイト戻ればーって。止めといた方がいいかな？　絵里辺りにでも頼んどくか。

　本当、俺、将来まともに仕事務まんねーだろーなー。真面目に芸術方面とか、一人でも何とかなりそうな仕事探さにゃ俺死ぬよ。

　ＶＲねー。なんかもういいかなあって思ってて。

　おっぱいなら頼めば未無生が揉ませてくれるし。

　ああ、この包帯？　うん。良子にその現場見られて、椅子ぶん投げられた。ひっでえのー。痣になってんだよ。ぶっちゃけ俺より、あいつ病院に入れた方がいいんじゃね？

　ピーキー過ぎてヤバいよ。あれ。

　フィギュアだって戻ってきてないんだよお。おうおう。わたくしの大事な家族！

　いっぱいいるじゃんって、あのなあ……ずっと同じ子に話してるのもそれはそれで悲しいのよ。わかねーだろーなーこの気持ち。この感覚。わかりたくない？　自分の部屋でぬいぐるみと話したりしない？　ほっぺた赤いよ？　ひょっとして――あいだっ！　ありがとうございます！

　それよりさ……。

　あいつ、ひょっとしてフィギュアにヤキモチ焼いてねーよなあ……。

　いやね？　一個だけじゃないのよ。持ってったの。

　昨日で遂に八体目。んで、来るたんび、フィギュア持って帰るんだけど、その分ぬいぐるみ補充してくのな？　なんだろーなーこれーなんの意味があるんだー？　って、ずーっと気になってたの。もやもやしてたの。本人教えてくんないし。

　で。昨日気づいたのよ。

　あいつが持っていくフィギュア、全部美少女フィギュアなの。女。男は今のところ無し。そんで補充していくぬいぐるみは全部動物モノか漫画の男キャラ。

　偶然？　だといいけどね……。

　不法侵入といい、ちょっとゾッとしてるんですけど……いやマジで。

　クラスで問題？　へえ……俺、知ーらない。

　いやいや、関わると禄なことになんないって！　彼氏だからって他クラスに出張って良いことなんて絶対無いから！

　それに、あいつのクラス、デザイン学科じゃん！

　ほぼ女子しかいねーんだぜ!?　この俺が行って問題が起きないとでも!?　何故君はそうやって俺をイジメようとする!?

　絵里はねえ。なんか最近妙に未無生と仲良いんだよな……。根暗同士って失礼。ええっと、口数少ない同士？　気が合うのかねえ？　良子とは未だにすげー仲悪いけど。

　ああ実際、絵里との関係はまだ微妙だよ。たまーに廊下ですれ違ったときに話すくらい。まあ前みたいに話せるようになっただけ、羽伊奈様に感謝ですわ。羽伊奈様々。

　……親が怖いけどね。本当。気をつけないと。

　また家族に迷惑掛けたら俺、死ぬわ。

　ところで？

　ああー……やっぱりバレてた？

　そう。

　学年一可愛い子と付き合えればそれで欲求も失くなるかなあって思ったの。

　だから、一番最初に羽伊奈に声掛けた。単純だよね。

　こんなん告白するのどうかと思うよ。我がことながら。

　俺すぐに下心出ちゃうじゃん？　口にしちゃうでしょ？　だから特定の一人に決めれば、もうそれで思い悩む必要は無いだろうってさ。

　ごめんなさい。利用したみたいになって。

　ていうか利用してましたね。

　したら羽伊奈、触らせてもくれないし、むしろ欲求不満に陥るっていう。

　エッチしよ？　駄目？

　じゃあさ。

　触っていい？

　★

「いいわきゃないでしょ」

　杜若羽伊奈――俺の四人の彼女の内の一人は、今日も変わらずそのご自慢のおっぱいを机に乗っけて頬杖をつきながら、可哀想な者を見る目を俺に向けた。

　その瞳の色が、以前とどこか違って見えるけれど、俺は、何が違っているのか言葉にすることができないでいる。