ヒッチコックに愛をこめて
阿佐ヶ谷ピエロ
ヒッチコックに愛をこめて
レベッカは裏窓から通りを見つめている。
小さな公園のジャングルジムにカラスの群れ
恰幅のいい男性が足早に通りすぎる。
いつからここに、こうしているのだろう。
ジェームスは今日カイロから帰ってくる。
話しによると、一緒に行った一人息子が誘拐されたらしい。事件は解決したと聞いたが大丈夫なのかしら?レベッカはとても不安と憂鬱を感じた。
ジェームスはわたしを愛してくれている。
でも、同時に奥様も愛している。
こんな事をいつまで続けていくのか、レベッカ自身もめまいがしそうだった。
確か奥様の名前はマーニー。一度パーティーで会ったけど瞳がエメラルドグリーンで髪はブルネット、本当に美しく聡明な印象だった。
レベッカの頭の中である不安がよぎった。それは自身の相続した莫大な遺産である。
もしかしてジェームスはこの遺産目当てで、
私に近づいたのではないかと。
でも、そんな事は無いわ、1年前に彼が海外特派員としてイタリア駐在中、私を呼び寄せて一緒に行ったあのリビエラの素敵な日々。
彼処で彼は私に言ったわ。絶対君を幸せにすると。
あの時の事は忘れないわ。
レベッカは一瞬でも彼を疑ったことに対して強く後悔した。
そうだわ、私は彼を心から愛し、彼もわたしを愛してくれている。それでいいじゃない。
その時ドア向こうからノックと同時にレベッカを呼ぶ声がした。
嗚呼、愛しいジェームス。
レベッカは杖をつきながらやっとの思いでドアに近づくとドアの鍵を開け、ゆっくりドアを開けると、そこには黒ずくめの男が立っていた。
男は、立ち尽くしているレベッカに近づくと、レベッカの左胸に向けてナイフを突き刺した。
レベッカは息絶える中で男のその瞳に見覚えがあった。その瞳はあの美しいエメラルドグリーンであった。
ヒッチコックに愛をこめて 阿佐ヶ谷ピエロ @20060204
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。ヒッチコックに愛をこめての最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます