デジタルサイド

nostaL

第1話 いつもの世界

目を開ける。


薄ら薄ら見えてくるいつもの景色


まだ働かない頭で手探りに目覚まし時計を止める


AM-9:00-


カーテン越しに伝わる光、今日も晴天。


アイロンが掛かったシュッとした制服に袖を通し、勝手に流れる情報に耳を通して


いつもの様に、家族と朝食。


耳がタコになるくらい聴いた様な話に相槌を打ちながらそれを流し込み


「行ってきます。」


また今日が始まる


通学路なんて退屈なものだ。

変わらない景色に、変わったとしてもその日に会う人との朝の「おはようございます」くらい。


後ろで盛り上がる会話は、昨夜の μtuberの内容


「でさー…、だよねー笑」


信号待ちでだんだんと近づいてくる会話に勝手に耳が引っ張られる



信号機が青に変わり鳥の音声が流れ


足を踏み出したその時


「ザッ…」


一瞬、ほんの瞬間だけ視界が揺らいだ


「…ィ、オイ兄ちゃん!」


鳴り響くクラクションで我に返り、見渡せば集まる視線

赤く染まっているだろう頬で平謝りをしてそそくさとその場から逃げ出した


あの感覚が余韻を残す


一瞬の様で長い様な、違和感を覚えた


その日から。

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