最終話 卒業式と内緒の結婚式

楽しかった。

何が楽しかったかと言えば.....この高校生活だ。

釣りにも行ったし海にも行った。


そして何よりも色々な知り合いが出来た。

後悔は無い、と思いながら俺は卒業証書を受け取る。

それから世界を見渡す。

羽田は富永と正式に婚約するそうだ。

時間が経ってから、だ。


山部は佐藤と一緒に付き合っている。


そして俺はユナと付き合っている。


周りのみんなも変化していった。

俺は.....何よりも。

この10年余りの時間の中で.....最も楽しい時間を過ごしていたと思う。


考えながら俺は桜の花びらが舞い散る中。

校舎の中を歩いていた。

今日でこの校舎も最後か、と思うと.....何だかやるせない。


そう思いながら自販機のある場所、ユナと一緒だった中庭。

そんな感じで巡っていると。

目の前から佐藤がやって来た。


「長門くん」


「.....おお。佐藤」


「今日の今日まで有難うね。色々と手伝ってくれて」


「.....そうだな。色々あったけど部活に招いてくれて有難うな。佐藤」


「.....感謝の気持ちを伝えに来たよ」


有難う、と言いながら泣き始める佐藤。

俺はその姿を見ながら複雑な顔をしていると。

背後から、泣かしちゃダメでしょーパイセン、とチョップが飛んできた。

それは優子である。


「.....お前は.....何すんだ。誤解だっての」


「.....そうですかぁ?何だか女の子を泣かせている様に見えますけど」


「そんな事は無い。現生徒会長様」


「.....何だか嫌味な言い方ですねぇ」


羽田が生徒会長になってから。

優子が次期生徒会長に立候補し。

見事当選を果たした。


それから優子が今は生徒会長を務めている。

俺は苦笑しながら優子を見ていると。

優子の目に涙が浮かんでいた。


「パイセン」


「.....何だ」


「ご卒業おめでとうございます」


「.....サンキューな。色々あったけど.....本当にサンキューな」


そんな感じで佐藤と優子と話していると。

背後から更に声がしてきた。

それは.....羽田と山田だ。

俺を見ながら、何しているんだ?、と聞いてくる。

顔を見合わせながら、何でも無いですよ。羽田先輩、と言う優子。


「.....そうなんだね。.....元生徒会副会長さん。そうなのか?」


「嫌味な言い方だな.....」


「事実だよねぇ。君は結局生徒会長副会長を務めた訳だから」


羽田達の言っている通り。

俺は去年は生徒会の副会長を務める羽目になり。

だけどそれでも.....楽しかった。

何もかもが新鮮味を帯びていたから、だ。

そうしていると。


「お兄ちゃん」


「.....おう。聖羅」


2年になる聖羅が俺の元に来る。

俺はその顔を見ながら笑みを浮かべる。

現生徒会の書記である。

聖羅は?を浮かべて俺を見てくる。

何だか新鮮だね、と言いながら。


「何が新鮮なんだ。俺は魚か?」


「いや。お兄ちゃんの事だからまた1人で卒業してもボーッとしているのかと思っちゃった」


「お前な。俺を何だと思っているんだ」


「うーん。お兄ちゃんの事は大概捻くれていると思っているから」


「我が妹よ.....」


そんな会話を聞いていた山田はクスクス笑う。

俺はその姿を見ながら額に手を添えて盛大に溜息を吐く。

それから、聖羅。お前はどっか行ってくれ、と言う。

そういう訳にもいかないんだよねぇ、と言ってくる聖羅。

何でだよ、と思いながら顔を見る。


「お兄ちゃん達の写真を撮影したいから。生徒会の記録」


「.....マジかよ」


「そうですよ。パイセン。早速行きましょう♪」


「.....ハァ.....」


俺は盛大に溜息をまた吐きながらそのまま歩き出す。

それから校舎の中の廊下を歩く。

そしてやって来たのは.....生徒会室だ。

懐かしいもんだな、と思える。

それから中に入った。


「.....此処で写真を撮るのか」


「そうですね」


「そうそう。生徒会旧メンバーって事でね」


「.....面倒臭いな.....」


「そんな事を言わないの。お兄ちゃん。ほらほら羽田先輩と並んだ並んだ!」


それから言われるがままに俺達は並んだりして写真を撮ってから。

そのまま脱出する様にしてその場をささっと後にした。

面倒事はゴメンだ、と思いながら。

それから歩いてやって来たのは.....約束の場所だった。



「.....突然呼んでゴメンね。藤也」


「.....ああ。どうしたんだ?」


俺達がやって来たのは。

高校の屋上。

此処も色々あったな、と思える場所だ。


そしてその場所で卒業の証の花を胸に着けたユナ。

俺に何かを差し出してくる。

それは.....ペアリングだ。

驚き赤面する俺。

モジモジするユナ。


「え、えへへ。ずっと思ってたから。結婚したいって」


「.....だからそう言うのは早いとあれ程」


「でも10代で結婚する人も居るから。先ずは先に」


「.....お前な.....まあ良いけど」


それから俺は額にまた手を添えながらも。

ペアリングを受け取りながらそのまま誓い合った。

するとユナは、折角だから結婚式の練習をしようよ!、と言い出してくる。

いやお前.....、と思ったが。

ユナがせがむので.....そのままする事になった。


「.....キスか?誓いの口付け」


「そうだねぇ。改めてやると恥ずかしいけど」


「.....じゃあやるなよ.....」


「でも私がやりたいから。.....ね?」


俺は頬を朱に染めながら頬をボリボリ掻いて。

そしてヴェールを剥がす様な真似ごとをしてから。

そのまま俺は目を閉じて待っているユナの肩を持ってからそのままキスをした。

それからユナは目を開ける。

涙が浮かんでいた。


「幸せ。とっても幸せ。.....有難うね。藤也」


「.....ああ。俺も幸せだよ。互いに良かったな。卒業出来て」


それから俺達は赤くなったまま外の景色を見る。

そして見つめ合ってから。

じゃあ教職員の方とかに挨拶して一緒に帰ろうか、と言うユナに。

俺は頷きながら、そうだな、と返事をした。

互いに.....笑顔になりながら。


fin

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ボッチであるこの俺がリア充の女子がたまたま不良に絡まれているのに気付き通報したら救ったリア充のメンバーなどから相談を持ち掛けられる様になったのだが アキノリ@pokkey11.1 @tanakasaburou

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