最終章 何一つとして後悔が無い世界
仲間達の讃美歌
第61話 このキスはスキンシップだから
山田が生徒会長選挙を抜ける事を決心したその日。
俺は.....同じ布団の中で一緒に居た。
ユナと一緒に、だ。
俺は真っ赤に赤面しながらユナを見る。
ユナは笑みを柔和に浮かべながら俺の胸に頭をくっ付けてくる。
いやちょっと待って。
何で夜に呼び出されて俺まで布団に巻き込まれているのか。
別々の部屋でお泊まりしようって形になったのは良いが。
俺は考えながらユナを見る。
「.....ユナ。離してくれ。これは恥ずかしいぞ。お前の家族が側に居るのに」
「.....別に良いじゃん。.....バレても恥ずかしくないし」
「.....いや。俺が良くない。俺は死んでしまう。あまりの.....お前の可愛さに」
「エヘヘ。そう言ってくれるんだね。じゃあ.....」
と言いながら俺の唇に自らの唇を重ねてくる。
俺は真っ赤になりながら蒸気を発する。
これマズイ。
マジに心理的に宜しくない。
何故こんな真似を、と思ったのだが。
「.....この前、裸を見られたじゃん」
「.....そうだな。それがどうした」
「あれ以降ね.....何だかこう言うのも恥ずかしく無いなって思ったの」
「.....ダメだ。ユナ。それは分かるがまだ早い。俺達は」
言いながら俺はユナの額をピンッと人差し指で弾く。
あうっ、と言いながら涙目になるユナ。
それから俺はそれを見て盛大に溜息を吐いた。
そして、お前な。恥ずかしさの問題じゃない。倫理的問題だ、と話す。
「.....俺達はそういう計画もあるけど。まだ早い。英さんが泣くぞ」
「.....だね。うん。じゃあ今はキスだけだね」
「まあそうだが.....その。キスもあまり.....」
「良いじゃん。キスぐらい。私は.....これはスキンシップって思ってるから。愛の」
「.....恥ずかしいって」
それから俺達はのそのそと布団から這い出てから空を見上げる。
そして互いに笑みを浮かべた。
そうしてから暫く月を見ていてから。
俺は布団から抜けた。
それから、お休み、と言ってからそのまま部屋を後にする.....と。
「やあ」
「どうした。山田」
「.....トイレだったのかな」
「.....そうだな」
廊下で浴衣姿の山田が立っているのに気が付いた。
柱にもたれ掛かっている。
俺はその姿に、どうした。もう時間は結構過ぎてるぞ、と言う。
山田は、君と話がしたくてね、と言ってくる。
「生徒会長にならないのかい。.....君はそんな才能があると思うけど」
「.....ああ。そういう話か。俺は陰の暗躍者だから。だからそう言うのは嫌いなんだ」
「そうか。.....君の行動は.....賞賛に値するよ。ゴリ押しだったけどね。僕も人の子だと思えた」
「.....そうか。ソイツは何よりだな」
「君は何故.....僕を呼んだんだい」
「お前なら変われると思ったからだ。だけどその理由は勘だな。だからお前に賭けたんだ」
俺は苦笑しながら肩を竦める。
すると山田は、そうか.....。と言いながら窓から外を眺める。
そして、僕が母親を失った時に君が居たら多少は変わったかもしれないな。
君は.....本当に勇気のある人間だ、と言ってくる。
俺はそんなもんじゃない。
「.....あくまで色々な事に巻き込まれているだけだ」
「.....そうかな。それであっても人を大切にする。その心は何よりも大切だ。.....絶対に役に立つよ。後々にね」
「山田。.....お前はどう言う理由で母親を失ったんだ?」
「.....自殺.....と言えるね」
議員の妻でもかなりの疲労がたたるみたいだ。
だからストレスで死んだ。
と言えるね、と言ってくる山田。
俺はその言葉に眉を顰めて、そうか、と答える。
それから山田は柱から離れてから、僕は僕なりの道を歩むべきだと君が教えてくれた。周りの皆さんが教えてくれた。だから僕は僕なりの空を歩むさ、と言ってくる。
「そうだな。お前ならきっとそういう事がやれると思う」
「.....そう言ってくれるのか。有難いものだな。君達に酷い事をしてきたのに」
「そういうお前は反省しているじゃないか。それだけでも十分だ。世の中のクズは反省しないばかりのクズがいっぱいだからな。議員もそうだが.....皮肉だ」
「.....そうか。有難う」
確かに議員は給料を貪り生きているだけの議員も居るからね。
でも勘違いしないでほしい。
僕の父親は現職の議員だが.....それでも必死にやっている。
君の考えは一部が間違っている事を.....教えておくよ、と言ってくる山田。
その言葉に、そうだな、と返事しながら廊下を歩く。
「君は何故こんな計画を思い付いたんだ?」
「.....俺は.....ユナを愛している。だから.....この計画にした。英さんの体調面も気にしながらだけどな」
「君は.....議員に向いてそうだな」
「よせやい。俺は.....議員になっても投票が集まらない」
「ハッハッハ。君こそ皮肉じゃないか」
「煩いな」
山田はクスクス言いながら。
そのまま歩いて行く。
それから踵を返してから俺を見てくる。
ユナさんは良い女の子だ。
だから君は.....必ず彼女を守り抜くんだぞ、と。
何様だコイツは。
「お前に言われんでも分かる」
「.....そうか。.....時に彼女は生徒会長に立候補したままにするのか」
「.....羽田に一任するらしい。戦いたくはないらしいから。お前が居なくなったし」
「.....成程ね。羽田くんならやってくれるだろう。任せられそうだ」
「.....まだおっちょこちょいな面があるけどな」
そうだね。それは確かにね、と言いながらクスクス笑う山田。
それから俺を見てくる。
君は母親だな、と言った。
いや。俺は羽田の母親じゃねーよ。
思いながらジト目で見ると。
まあ冗談だ、と山田は反復した。
「さて。それじゃ寝ようか」
「.....お前が指示すんな」
「まあまあ」
そして俺達はそのまま来客室に戻る。
それから横になってウトウトしていたら寝てしまった。
そして.....生徒会長になった羽田。
それからテスト。
そうしてから文化祭。
そんな感じで時間は過ぎ。
俺達は高校3年生の.....春になった。
卒業まで.....あと2日となる感じで.....。
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