愛情欠乏症の写真家

Leo

第1話

過去のトラウマからは、逃げられなかった。

自分では思い出せない記憶として。

思い出す必要のない記憶として。

そのままにしておけばいいものを、

トラウマというものは厄介で、

その時トラウマを植え付けられた場所や人、

物までもが原因で、何もかもを信じられない。

きっとこれからもそうなんだろう。


「相変わらず写真撮るの上手だこと」

「褒めたって何も出やせんのに、今更何を」


子どもの時からそうだった。

何かに付けて褒められる事が多かった。

それが家に帰れば邪魔だと言われ、

産まなければよかったとさえ言われる。

ただ血縁があるだけの2人の機嫌が悪い日には、殴られ蹴られの暴力を振るわれたこともあった。

そんな猛毒の元で育った僕には、何も。

ごく普通の家庭で育っていたら手に入れるはずのものが、何も無い。


こんな出来損ないで人間になり損ねた化け物でも、彼女だけは。

『貴方が自分をどれだけ嫌な人間だと思っているかよく知ってる。それでも貴方を愛してる。唯一貴方だけが、私を受け入れてくれたから。だから、無理に変わらなくてもいい。自分らしく生きればいい。』

そう言って、何もかもを受け入れてくれた。

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愛情欠乏症の写真家 Leo @killerqueen367

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