第5話 俺以外誰も覚えてないけど、後の火種が生まれたのは割と序盤だったりする

 ステータス的なナニカ(ARとかでよくある仮想ウィンドウ的な触れない低解像度の画面)は出たけど、結局何も分からなかったでござる。

 鑑定チートくんに詳細を教えてもらえた一度目の転移とは違い、今は相手への疑心や殺意や諸々の負の感情の所為で冷静に対応できない可能性があるので、そのうちステータスが分かるようになれば良いかとひとまず先延ばしを決意した瞬間である。というかクラスメイトたちもあの記号から意味を読み取れたと限らないし。


 さて、これから俺はどう行動すべきか。普通ならここで集団で行動をするのはモンスターに見つかりやすくなるという点で悪手だが、その集団が強者の集まりならば話は変わってくる。むしろモンスターをコロコロできる人間が多ければ、囮が増える分より安全にモンスターを狩れるだろう。

 しかしここで主観的に物事を考えてみると意見は反転する。クラスメイトたちは全員が覚えていないこととはいえ、お互いに殺し合いをするような人間性の持ち主である。それに生産チートと戦闘チートが同じ食事内容だったことに端を発する派閥形成(最後まで殺し合いの火種となるタイプの面倒臭いヤツ)が異世界転移後僅か5日間で起こったのだ。俺は殺しに来た相手を信じられないし、派閥に加わり殺し合いに巻き込まれるのも御免だ。

 うん、逃げよう。




【主人公】

 結局逃げの一手を打つことにした過去の経験から学べる子。賢者は歴史から学び、愚者は経験から学ぶと言うので、たぶん愚者。バカ。


【戦闘チート(武術系)】

「現時点でさえ食料が足りていないのに、非実働部隊のヤツらは飯食い過ぎなんだよ!」

 バカ。


【生産チート】

「生産するにしても設備とか道具とか足りてないし、そもそも材料がないんだよ!」

 バカ。


【戦闘チート(魔法系)】

「(実は魔法とかよく分からないし実際チートなんてまるで使いこなせていないけど、なんか実働部隊に入ってるから大きい顔して飯にありつけるのラッキー)」

 バカ。


【特殊チート】

「何も言えねえや」

 バカ。


【前回転移時の主人公のムーブ】

「実働部隊と非実働部隊をチートで組み分けるんじゃなくて、その人の気質に合わせたら良いんじゃないか」とリーダー格に提言した。奴を横目に記憶した食べれる無害な野草や果物を集めることに腐心した。話し合いについていかなかった所為で派閥無所属みたいになった。バカ。

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俺以外誰も覚えてないけど、このクラスで異世界に行くのは二度目だったりする 今日から俺が勇者 @YuusyaOre

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