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今思えば、『しおんにぃ』のことを殺す気かと自身の行いに怒りを覚えたが、当時の自分はまだまだ知識の足りない頭で何とか、『しおんにぃ』のことを治そうと躍起になっていたことから、思っていた以上に好きだったんだなと思うと、ある意味いい思い出だなと笑みを零す。
しかし、その笑みも今の寂しい気持ちを払拭することはなく、すぐに悲しそうな表情となる。
「·····しおんにぃ、どこにいるんだよ」
会いたい。頭を撫でて欲しい。
「あーかーとっ!」
「ってぇ!」
突然、後ろから来た衝撃に、痛みと驚きで携帯端末を落としかけたが、何とか手放さずに済み、安堵の息を吐いた後、肩に手を回してきた人物の方に睨みつけた。
「おい大野。スマホ落としたら、どうするんだよ」
「わりぃ、わりぃ。てか、スマホっていうよりもそのストラップの方っしょ? 愛しの『しおんにぃ』のっ」
「·····うっざ」
語尾にハートマークでも付きそうな言い方も含め、そう吐き捨てた嫌悪感が凄まじい朱音に、友人の大野はニヤニヤしていた。
「だってそうじゃ〜ん。行方不明の『しおんにぃ』のことを十年以上だっけ? 一途に想い続けるわ、そのストラップも肌身離さず持ってるわで、そんなの兄弟とはいえ、ずーーっと、捜し続けていられないわー。俺なら、途中で諦めるし、忘れる」
「お前とこの兄貴と一緒にされたくないわ」
「仲がよろしいことで」
「言ってやがれ」
柵に背中を寄りかかる形となった大野に頭に血が昇った朱音はそう吐き捨てると、まだ余裕のありそうな顔の大野が、「だけどさ、」と言った。
「マジのマジのマジで、その『しおんにぃ』ってまだどこかにいるわけ? てかさ、何でいなくなったか、本当に覚えてないわけ?」
「··········あまりにもガキだった頃の話だから、マジで覚えてねぇ。だから、余計にすぐには見つからねーんだわ」
「·····なんか、わりぃ」
「なんで謝んだよ。らしくね」
「おめぇがそんな
ケッと、そっぽを向いた大野であったが、これが彼なりの気遣いだということは知っていたので、フッと笑い、言葉には出さずに礼を言って、『しおんにぃ』との思い出を語り始めた。
そうして語っていくうちに、会いたい寂しさが募ってしまったらしく、涙が勝手に溢れ、それでも語る口は止めないものだから、大野がわたわたしつつも、「分かった! 分かったから!泣くのを止めるか、喋るのを止めるか、どっちかにしろ!」と言われたのは言うまでもない。
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