折り合いの悪い父親と過ごした辛い生活から離脱し、ついに夢を叶えるべく歩を踏み出したカバかもん氏。しかし手持ちの金はあとわずか……。そして辿り着いた新居は、敷金礼金不要の安価なシェアハウスのワンルームだった。
冒頭でかいつまんで語られる著者さんの半生はかなり辛いのですが、心機一転と踏み込んだシェアハウスはこれまた過酷! 同居人は外国の方ばかりで、衛生環境が酷い。章タイトルにもなっていますが、「お安い理由」には超納得させられるのです。これからシェアハウスに住もうと思ってらっしゃる方は現実を見せつけられるでしょう。
でも、著者さんは同居人さんとの交流で様々な経験や発見をしていくことになります。中には恋愛劇に——ならなかったお話もありますが、外国視点から日本を認識された体験談は、読者にも発見をもたらしてくれるのです。
現在はシナリオライターとして活動されている著者さんによる、日本の中の外国で暮らした日々の記録。読み物としてもシェアハウスマニュアルとしてもおすすめです。
(「人、匂い立つ」4選/文=高橋 剛)