第21話〇チームFF15結成
現在では不遇の大作として有名になってしまったファイナルファンタジー15(以下、FF15)であるが、発売当初までは大いにファンから期待されていた作品であり、私もその一人であった。
まだ語ってはいない部分ではあるが、2016年ごろの私は過酷な肉体労働に身をやつして生活していた。交通費も出ない世知辛い日払い仕事を終えると、落ちぶれた気分になって何とも言えない気持ちになる。そんな最中によくFF15の最新トレーラーを思い返しながら、テーマソングである『Stand By Me』を口ずさむと、スッと心が軽くなる……当時の私にとっては『FF15発売までに暮らし向きを良くする』というのが数少ない未来への希望であり、モチベーションとなっていた。
さて、FF15の発売の迫る2016年11月。その頃にはおかげさまでギリギリ生活できるだけの食い扶持を確保することが出来ていた。しかしながらFF15をプレイするためのPS4を購入するだけの余裕はなかった。そこで私が思い立ったのが……
「PS4が無ければ、借りればいいじゃない」
20代の台湾人女性、ジャネットがPS4を所持していた。彼女とはまるで知らない中でもなかったので、多少無理を承知でも明らかに拒否はされないだろうとタカをくくって交渉に挑んだ。
「FF15は俺が買うから、一緒にPS4で遊ばない?」
するとジャネットは、
「ヤダ。私は『人食い大鷲のトリコ』をやるから」
と、あえなく撃沈した。
まぁ、FF15は一人用なので一緒にプレイするという時点で訳が分からないから、断られて当然か。
それでも諦められなかった私は、何とか彼女を懐柔すべく無い知恵を搾りだそうと、キッチンで一人ウンウンとうなっていた。
するとたまたま近くで飯を食っていたイギリス人のデイヴとFFの話になった。彼は日本のビデオゲームを愛する海外オタクである。
「デイヴ。FF15、やりたくない?」
「やりたいけど、PS4ないしお金もない」
彼はなけなしの金を彼女とのデートに使うリア充でもあった。
「じゃあ、俺と一緒にジャネットに頼み込もうよ。ソフトは割り勘で買おうぜ」
「その話、乗った!」
一人じゃダメなら二人。物量作戦を前にジャネットは折れてくれた。
ということで去る11月29日、私とジャネットはリビングにPS4を持ち込み、ソフトをインストールしつつプレイできる瞬間を今か今かと待ちわびていた。
デイヴはどこに行ったかって?
彼は「約束の時間に少し遅れる」と連絡をよこしてきた。
「まあ、インストールするまでの間には帰ってくるだろうよ」
さすが世界的大注目のタイトルの発売当日と言うだけあって、インストールは遅々として進まなかった。それでも私とジャネットは辛抱強く待ち続けた。ソフトのご降臨と、デイヴの帰宅を。
「それにしても、あいつ遅いな……」
イギリス人にとっての少しとは、どうやら10分、20分ではないらしい。1時間経ってもデイヴからは音沙汰なかった。
そして彼が現れたのは、ソフトのインストールを開始してから3時間も経過した頃だった。
「ごめん。お待たせ~」
「何がお待たせだ。ぶっ●すぞ!」
若干テンションがおかしくなって言い過ぎたと反省しているが、3時間待たされた者の身にもなってほしい。
その後、ジャネットが「いいから早く始めようよ」といなして、私たちを席に就かせた。3人で代わる代わるキャラクターを操作し、日付を跨ぐまでキャッキャ言いながらFF最新作を楽しんだのであった。
私たちは週に何度か集まり、一緒にFF15をプレイすることを約束し合って、その日は解散となった。
しかし当時私が就いていた職は12月が超繁忙期であった。一緒にプレイしようにも日程が合わず、苦肉の策としてデイヴとジャネットが探索をし、私がいる日にストーリーを進めてもらうという体制へと変化していった。
だが年末になるとそれすらもままならなくなったので、「もう私に気を遣わずどんどんストーリーを進めていって欲しい」と二人に伝えたことにより、序盤とエンディングの間に何が起こったのか、未だに私はサッパリ分かっていない。
私が暇になった頃にはクソゲー扱いになっていたし、ジャネットは『人食い大鷲のトリコ』に夢中になっていたので、改めてPS4とソフトを買い直してまで確かめようとは思わなくなっていた。
発売まで1年以上心待ちしていたのに……世の中ままならないものである。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます