㉕【火薬庫?】

「ところでカドミさん、シルベスタさんに魔力を持たせる方法って考えつきましたの?」

「おう、それじゃ。もちろん思いついとるよ!」

「どないすんのや?」

「最初は転生者の細胞を採取してDNAを弄って彼の体内に定着させる事を考えたのじゃが……」

「ああ、それだとやばいよな……」


 普通なら反対する事もない提案だ、普通なら。言わばワクチンみたいなものなのだから。しかし……ついさっきまでの経験から“それ”は非常に危険を伴うのがわかってしまった。


「うむ、ヘタに強力な細胞だったりしたら、そこのGデーモンの様になってしまう可能性がある」

「それは見たくないっスね」

「そこで、じゃ。心臓の動きに連動して血中に魔力を流す装置を埋め込む」

「そんな事……出来るのですか?」

「考えてみぃ。自動人形オートマトンは全身に魔力を流して動いておるんじゃ。それの応用じゃよ。伊達に開発資金をつぎ込んではおらん」

「伊達につぎ込んでいない金って俺のだよな……」


 カドミのヤツ、俺から目をそらしやがった。……ったく、三倍くらいにして返してもらわんと割に合わんぞ。


「ですがカドミさん、それでは魔力そのものを“生みだす”事は出来ないのではないでしょうか?」

「うむ……そこで、自動人形オートマトンに組み込んである“地脈から魔力を吸収する装置”言わば充電池を使い、無理矢理体内に魔力を供給する。身体が“魔力を循環させる事”に馴染んで来たら、最後に身体に埋め込まれている魔道具アーティファクトの魔力そのものを自身で循環させ、黒武器の魔力と相殺させる」

「なるほど……計らずもキョウちゃんの資金提供で作り上げられた自動人形オートマトンの技術が人間を救うって事ね」


 セイラの一言で、カドミは鼻を高くして言葉を続ける。しかしそれは、俺の金を使い込んだことを肯定する意味ではない。決して!


「うむ、身体に馴染ませる迄数年、その後魔道具アーティファクトの魔力を無意識に身体に循環させる訓練で数年。ちと長い治療になるが、それが一番確実じゃと思う」


「カドミさんって……意外と頭いいんスね。驚いたっス!」

「意外言うな」


 転生前……まあ、生前って事になるが、カドミはプログラミングの会社にいたから、何気にシステム構築の類は得意分野なのだろう。もっともそれらの知識や技術が正しい方向に向くかと言ったらそれは疑問符が付くのだが。言わば、打率一割を切ったホームランバッターみたいなものだ。


 ……駄目じゃねえか。


「シルベスタさんは、それでよいのです?」

「もちろんですぜ。こんなあっしの為にここまで色々考えてくれているんだ。有り難すぎて断る理由なんでありませんぜ!」

「そうなると、当面の治療に必要な物資や道具を買いそろえる必要があるな」

「リストにしておくから、キョウジ買い出し頼んだぞ」


 う~ん、やっぱり俺か。ま、行くのはかまわんけど……


「その前に一つだけ聞きたい事があるんだけどさ」

「なんじゃ?」

「Gデーモン焼く時に大量に火薬撒いたじゃん。あんなもんどこにあったんだ?」

「あ、それ自分も不思議だったっス。作戦では使う予定なかったのに自動人形オートマトンが急にばら撒き始めて……」


 正直あの行動には皆驚いていた。まったく予定になかった行動だったが効果はかなり高かったし、あの作戦は自動人形オートマトンでなければ出来なかっただろう。


「ココじゃよ!」

「いや、そりゃあここで間違いないだろうけどさ」

「いや、だからココなんだって」


 ……なんかカドミのヤツのだけれども?


「城ってな、戦闘になった時にすぐに武器類を持ち出せないと意味がないじゃろ? じゃから入口近くの地下に武器庫があったりするんじゃ」


「おい、ちょっとまて、それって……」

「丁度ココ、ワシらの足元。地下室に火薬庫があるのじゃよ」


「それ、今言うのかよ……」 


 

 一歩間違えば、火薬庫の真上で一万度大爆発だったじゃねぇか。






第六章【be Still Alive】 -生きるための未来-  完




次回! 最終章【epilogue】 -明日への布石- ①一番近い、大きい街


是非ご覧ください。

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