㉓【血筋】
「……」
「……」
「……はぅわ!!」
「あら、お兄さまお目覚めですか?」
「……俺、どのくらい寝てたんだ?」
「二時間くらいっス」
「そうか……」
いくつか気になる事があって辺りを見回してみた。Gデーモンは相変わらず高温を発したままで動きは無い。二時間もあの温度のままなら、流石に共進化細胞とは言え死滅しているだろう。ヒビの修復も行われた形跡はなさそうだ。
そして十数メートル先には、黒武器が石床に突き刺さっているのが見える。
シルベスタは治療を受けた状態で寝ていた。体力消費を押さえる為に
パティとレオンでGデーモンの状態監視をしている。
カドミはプリプリの二人と
「なんか……嫌な夢見たな」
「お、どないしたんや?」
「セイラが俺を羽交い絞めにしてさ……」
「ふむふむ……」
「折角腕からとれた黒武器を、パティがまたくっ付けようとするんだ……」
「……」
あれ? ……なんでみんな大人しくなるの?
「流石にありえない夢でさ、そこに黒武器が刺さっているのを見てなんか安心したんだ。……って、みんな黙ってどうしたんだ? 何かあったのか?」
「い、いや、何もないっス!」
「ああ、なんでもないですよ~。キョウジさん」
「そうそう、全然、普通です、問題ないっす」
……レオンもプリプリの二人も目が泳いでいるじゃねぇか。
「なんか怪しいな……」
「そ、そんな事ないでしょキョウちゃん!」
「そうですわ。え~と……そうそうカドミさん、お兄さまが起きたらお話があるのでしたよね?」
「ああ、そうじゃったな」
何でカドミのヤツ笑ってんだよ。つか、あれは何か隠してる顏だ。後で問いただしてやろう……。
「キョウジ、黒武器がゴーレムになると何故わかったんじゃ?」
「何故って……なんとなく?」
「なんとなくでやるのがキョウちゃんよね~」
「オレら“なんとなく”に命運握られていたんですか~」
「マジっすか……」
確かになんとなくだけど、何故か『出来る』という確信があった。理由は全くわからないが……。
「そう言えば以前レオンが、俺の魔導書が“普通と違う”って言ってたけど、何か関係あるのか?」
「あると言えばある。というかキョウジ……」
「もったいぶらずにさっさと言えって!」
「そもそも魔導書を作り出したのは“八十年前のお前自身”じゃぞ!」
「これは……驚きましたわ」
「そうね、まさかキョウちゃんが……」
俺が作り出したのか、これ。って事は俺がゴーレムの産みの親? なんかすげー事やってんな、八十年前の俺氏。
「特許申請しておけば、今頃俺は億万長者だったのか……」
「ああ、その権利は今ワシが持っておる。入ってきたリベートはホレ、そこにいる
「……おいこらカドミさんや。俺の開発した物をお前が権利持ってるとかおかしくねぇか?」
「そうは言うがのう、キョウジ。権利申請前にお前消えたし」
「あ……」
「それにワシだって苦労したのじゃよ。転生者に召喚の仕方をレクチャーしたり、ゴーレム普及の為に大会をプロモートしたりしてな」
なんと……カレルトーナメントの仕掛人がここにいたとは。カドミのヤツは平然と言っているけど、なんかもう転生者のルールって、全部俺らが作ったんじゃないかと思えてくるわ。
「最初ワシらは、『魔力を帯びる物質』に精霊を宿す実験をしていたのじゃよ」
「その記憶が、黒武器ゴーレムの確信だったんスね。自分には全く想像出来なかったっスよ」
八十年前の俺ってのは、今の俺とは別人のはずだけど……これもまた“魂に刻まれた何とやら”のせいなのか? 別人でも魂が同一だと記憶の共有があったりなかったりって感じか。
「うむ。当時の転生者に実験を手伝ってもらい、色々な物体をゴーレムにしたのじゃが形が安定しなかった。その為“本”という形にデザインを書き込む事で、具現化の補助となる様にキョウジが考案したんじゃ」
「なるほど。俺のおかげで、転生者が安定してゴーレムを召喚出来るようになったんだな。……うむ、それ、考えた奴頭いいよな。素晴らしい! 血筋のなせる技か」
「キョウちゃん、自分でそれ言うんだ……」
「一言多いですわね!」
「あ、一つ思いついたんだけどさ。魔力込められる素材でゴーレムのフィギア作れば売れるんじゃね?」
調子に乗って提案してみたが、全力で却下された。『どこにそんな時間があるのか?』というのが大きな理由だ。
ちっ……いつかコッソリ作ったる。
次回! 第六章【be Still Alive】 -生きるための未来- ㉔通報……
つか、途方もない話なのだが……
是非ご覧ください。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます