⑧【暗号】
それにしても、いざという時の為の暗号を決めといてよかったわ~。赤は危険、黒は敵対、緑は了解、青は友好、等々。これらを物で表す。単純やけど、単純故にバレにくいんや。ただし色が判断出来ん物は厳禁や。パプリカ言われたら赤か黄色かわからんからな。
……しかし、まさか弟子二号が本当の裏切者だったとは想像出来へんかった。絶体絶命の所を助けられたのも、多分タイミングを計っていたんやろな。
「……ったく、一歩間違えたら死ぬっちゅ~ねん」
「師匠はどこでおかしいと気が付かれたのですか?」
「おかしな点だらけや。言うて、そういう見方をするのはキョウジの影響やけどな」
「……ほう、どこにミスがあったのでしょうか? いや、あったのでござるか?」
――なんでや? 置き去りにしてきたはずやのに。あかん、弟子二号の素早さを侮っていたわ。簡単に回り込まれてしもうた。いくら何でも早すぎやろ……。これが人間の動きか?
「総司、あなたはいつから私を……いえ、父様と母様を騙していたのですか?」
「ああ、私の本名は山南敬助と言いましてね……」
つまりは、ハースト家に執事として入る時にはすでに偽名で騙していたという事や。これは……嬢ちゃんショックでかいやろな。ちゅうか、山南敬助も偽名やな。さすがに有名人すぎるで。こいつ、新選組マニアなんか?
「ま、山南って事にしといたるわ。お前はこの世界のイギリス諜報部のルール知らんのやろ」
「知る訳ないでしょう。同盟なんてお互いに表面上の事ですので」
なんやと……こいつ今『同盟』って言ったな。日本とイギリスが、って事か。かなりキナ臭い話になっとるな。
「諜報部員はな、同じグループに属するものは同じ頭文字のあだ名で呼び合うんや。 セイラの部下だからシルベスタや。他のグループ同士はその名前で呼ばれへん」
「ほう?」
「つまり、夜襲撃された時に『仲間同士で呼び合っていた』というのは明らかな嘘や。セイラの部下はヤツ一人だけやで」
「なるほど。これは余計な一言を言ってしまいましたな……」
「それにな、嬢ちゃんが部屋で寝ているのに”暴漢を放って逃げる”とかありえへんわ」
そんなん、護衛のとる行動やないで。ましてや嬢ちゃんが子供の頃から使えていた執事ともなればなおさらや。
「更に、ですわ。魔力でわたくしを特定出来る能力でもなければ、ローカルズの人達が追跡して来れる訳ありませんもの」
言うが早いか嬢ちゃんが臨戦態勢や。ショックでどうなるかと思ったが、僅か数日の間にものすごう強うなったな。……ただ、良し悪しで言ったら”悪し”や。年場も行かない娘に辛い思いばかりさせるもんやないで。
「これはこれは。反省ですね、ミスが多すぎた様です。バイクの連中とは、イギリスと同盟しているからと無理矢理組まされたのですがね」
「疑いたくはありませんでした。ですが状況を客観的に観ると、答えがそれしかなかったのです……。お兄さまからも、常に”人を疑え”と教えられていましたわ」
キョウジの奴、子供になんて事教えとんのや、アホが。ゆうて、今回はそのおかげで助かったのやが。なんか……余計にムカつくな。
「やはりキョウジ殿の影響ですか。厄介な人物と関わってしまったものです」
「それで、わたくし達にどのような御用ですか? ……山南さん」
「わかり切ったことを。その石を、もらい受け申す!」
――言うが早いか、山南が刀を構える。今度は木刀やない。真剣や。あの恐ろしいまでの剣技と魔力の使い方。それに嬢ちゃんはついさっき戦ったばかりでかなり疲労しておる。逃げようにも相手の方が早い。
……こんな時、キョウジならどうする? セイラならどう切り抜ける?
「嬢ちゃん、今こちらの有利な点は一つもあらへん。ワイを差し出して降伏せえ」
「すると思います?」
「思わへん。思わへんが、そうしてほしいんや。バイク迄行ければと思ったが、ワイの見積もりが甘かった。甘すぎたんや」
「さあ、覚悟は出来ましたか? 降伏なら受け入れますよ。命の保証は出来かねませんが」
次回! 第四章【true this Way】 -人の在り方- On your Side:味方 ⑨ブラフ
たまにはワイもええとこみせへんとな!(タクマ談) 是非ご覧ください!
―おまけ―
☆タクマとパトリシアの暗号会話☆
そやな~、ワイ腹減ったで~。 トマトのピザが食いたいわ~
『暗号開始や。 危険な感じがするで』
え? 師匠、食べなくても平気なのでは?
『本当ですか? 気のせいでは?』
なんでやねん! ワイも生きとるんやぞ!……
『ほんまやで! ワイも命がかかっとんのや』
はいはい、行きますわよ
『わかりました、観察してみます』
********************
ワイは、トマトのピザとイカスミパスタや!
『危険や。 コイツ悪党のにおいがするで!』
わたくしは……グリーンサラダで
『了解しました』
なんや? 嬢ちゃんダイエットか?
『なんや? 嬢ちゃんも気が付いたか?』
ちょっと最近危なくなってきまして……ほほほほほ
『今は危険を認識しています』
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