⑰【ドヤ】

「それで、今セイラ姉さんはどうしているんスか?」

「無事なのは保証します~。ディーンが護衛していますので。ただ、セイラ姉さん本人の希望で、場所は教えられません。すみませんです~」

「……つまり、セイラは生きてはいるが動ける身体ではない。と受け取っていいのかな?」

「はい。本調子じゃないのに加え、護送時に”手錠”みたいなものが付けられていまして。どうやらそれが魔力を封じているみたいなのです。その外し方がまったくわからず……」


 斬られた傷が悪化しているのか、もしくは他にも何かあるのか。いずれにしても本人が隠しておきたい事なら今は言及しない方が良さそうだ。


「あともう一つ。キョウジさんに伝言があって~。『イギリス領248-167』だそうです」


 なんだそりゃ。行った事がない場所だが……


「あ……カドミの居場所か?」

「それはわからないですね~。他には何も言っていませんでしたから~」

「ルキフェル、一つ確認したい」

「なんでしょ~?」

「セイラの手錠を外すことが出来る者がいるとして、セイラを保護している場所まで連れていく事は”君の判断で”可能なのか?」


 真剣な表情で考えるルキフェル。セイラに言われた事と現状を計っているのだろう。


「……可能です。怒られるでしょうけど~。それ以上にあの手錠はヤバイので~」


 気になる言い回しだな。手錠は魔力を封じる他にも何か悪さをしているという事か。身体そのものに影響が出る効果。何か薬物の可能性もある……筋弛緩剤みたいな物だとしたらかなり危険だ。体力回復しないどころか死に至る場合がある。転生前の日本では”毒”として扱われていたくらいだ。



「レオン、俺の後ろに乗れ!」

「どうするんスか?」

「レオンのバイクにルキフェルが乗って、エクエスさんと一緒にアメリカに向かってくれ。俺とレオンは伝言の場所に行ってみる。わざわざ伝言してきているという事は、優先して向かう様にという意味があるのかもしれない」

「なるほど、それが一番効率が良さそうですね。ついでにもう一台バイクせしめてきますよ!」


 アメリカ政府と顔を繋いであるエクエスさんがいれば、元外交官の人と面会するのも容易いだろう。日本政府が使っている手錠なら、彼も解除方法を知っている可能性がある。それを聞き出してからルキフェルにセイラの元に案内してもらう。 


 おまけに『せしめたもう一台のバイク』でパティも連れ出すという事だろう。セイラもパティも同じ敵に狙われているから、一緒にいてくれた方が護りやすい。


 そしてセイラ方面の状況はパティの持つタクマを通して知ることが出来る。


「エクエスさん、任せた!」

「お任せください。パトリシアさんにもよろしく伝えておきます!」

「兄さんズルいっス。俺も行きたいいっスよ~!」


 パトリシアの名前を聞いた途端に子供の素顔に戻るレオン。わかりやすい……まあ、みんな知ってるけど。


「レオン坊はアメリカ行ったら捕まるで?」

「え……なんででスか?」

「山南蹴り飛ばした時にレンガの壁破壊したやろ? あの後その影響でそこにあった家が倒壊してな。レオン坊は”家一軒倒壊させた犯人”って事で手配されとるって嬢ちゃん言うとるで」

「マジか、それは俺も初耳だぞ!」


 パティは”嘘の”理由を話して保護してもらっているけど、レオンの処遇に関しては何も条件出してなかったしな……


「酷いっス……」

「ではそういう事で、パトリシアさんに会いに行ってきますよ!」


 ……エクエスさん容赦ねぇ。



「あ、その前にルキフェルさん」

 エクエスさんが白い歯をキラッと光らせながらドヤっている……?


「なんでしょう……?」



「バイクの運転を教えます。三分で覚えてください!」





第四章【true this Way】 -人の在り方- On your Side:味方  完



次回! 第五章【Destiny of the Evil】 -悪の運命- 

是非ご覧ください!



ご覧いただきありがとうございます。


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