⑫【G】
「それにしても、なんかムカつくっスね」
「だよな。一発ぶん殴らないと気が済まねえのに」
怒りのやり場がなくなったような感じだった。騒動の首謀者が結果を見ずに死んで途中退場するとかあり得んだろ。ずっと付きまとって監視していたり、あれだけ俺達を煽っておいて、悪党なら悪党らしく最後の最後は俺達に討たれろっての。
「じゃあ、そろそろこちらも奥の手といきましょうか！」
「ったく……切り替え早ぇな、セイラ」
「お兄さまは集中してください！」
「ああ、すまん……」
また言われてしまった。なんかもう、勝ち逃げされたような気分とセイラのグロい描写とが融合してモヤモヤ感が半端ない。
レークヴェイムは一旦間合いを取り、城の入り口扉があった辺りまで下がった。鉈のデーモンは急激な成長に身体がついて来ていない為か、動きは鈍い。追い付いてい来ないうちにこちらも準備を整えておいた方が良さそうだ。
〔べ……ガ…コロ………ズ……〕
――今、なんて？ 空気の振動で伝わってくる声や音という感じではなく、地面を這って響いてきたような感覚だった。
「べがころず。ってなんスか？」
「いえ、これは……。キョウちゃん、『ペガ殺す』じゃないの？」
「なんですと？ チョットマテ、何で俺を名指しなのさ。デーモンに知り合いなんていないぞ？」
「まあ、普通はいないっスよね」
「でもさ、さっきからずっとだよね……」
……そうなんだよな、セイラの言う通り、さっきからずっと”俺だけを”睨み付けてきているんだ。
「でもお兄さまの事ですから、どこぞやで騙して逃げたとかありませんの？」
「全力で否定するわ。デーモン騙して逃げるとかどんだけ
いやマジで心当たりなんて……あるはずがないのだが、いやしかし、俺を睨んで『殺す』とか、何か関係あるって事だよな？
「俺をペガと呼ぶのは、ゴーレムトーナメントの時の関係者って事なのか？ レオンとこのチームリーダーとか？ あの時以外で俺の名前出したりしてないんだよな……」
「でも、あの男は灰になってますわ」
「だよな。……うむ、わからん！ わからんから今はスルーだ。それよりもセイラ、パティ、ちょっとやってもらいたい事がある」
レークヴェイムはランスを構えると、鉈のデーモンに向かって
しかしその攻撃は鉈であっさりと受け流された。そのタイミングに合わせて、パトリシアはデーモンの左手側を狙い水属性の
俺の狙いはそこだった。左腕から直接生えている特殊な形状の爪が何かを調べる事。どこかで見た事がある様な形状。あれが一体何なのか？ デーモンと組み合う前に確認しておく必要があった。
デーモンは水球を叩き落とそうとするが、そもそもがフェイクの水球。中身は何もなくがらんどうだ。手ごたえも何もなく、水しぶきだけが飛び散る。
パティは、本来サッカーボール程度の大きさの水球を、直径二メートルほどの巨大球に見せかけて撃ち出していた。その工作の為に、形状を変えるのが容易な水属性を選択したのだが……偶然にもこの選択が功を奏した様だ。
鉈のデーモンが水球を壊した時にわずかに見え、聞こえたもの。それは二本の爪の間に発生した電気の光と『バチッ……』という音だった。
「……なんや、スタンガンみたいやな」
あ～、それか。そういう事なのか。……あれは爪ではなくて電極。右手に刃物を持って左手にスタンガン。思い出したよ。何で忘れていたのか不思議だけど。
――俺に恨みを持っていて『ペガ』と呼んでくるヤツ。
「久しぶりですね……G先輩」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます