㉔【ジェノサイド】


 カドミのまとめた記録より。


【二〇五〇年

地球は、地球外生命体の襲来を受ける。 

彼らは地球上全ての兵器を無力化し、平和的かつ圧力的に対話を求めてきた。


実際その戦争における死者は、事故やパニックになった民衆の暴動にるものだけで”その存在”が地球人を殺した現実はなかった。


しかし、暴動や略奪等、人々の愚行を目の当たりにした”その存在”は考えた。このままこの星を存続させて良いものか? と。 

もちろん『上から目線』とか『偉そうに』という反応が多く、その感情もまた地球人に対する印象を悪くしていた。


――故に“創造主”は一つの決断をする。


『地球が存続できるかどうかのチャンスを、地球人に与えよう』


それが、地球に生命体を創造した者達の決断だった。】





「……って、なんかこんな漫画なかったか?」


 ここまでの内容を読んで、あまりに漫画的な内容に驚くよりもむしろ呆れてしまっていた。多分そのチャンスが俺らに託されて、失敗して地球が滅んだって流れなんだろう。


「その漫画は真実を描いているのじゃよ」

「作者は転生者でした。とでもいうつもりか?」

「似た様なものじゃな。それ以外にも数名、この世界の危険性を知らせるために、地球に送り込んでいるのじゃ」


 そこがおかしい部分だ。どう計算しても整合性が取れなくなっている。


「まてまてまて……さっきから話が嚙み合ってないんだよ。俺達が転生したのは約半年前だ。だがカドミの話はかなり長い年月に感じるのだが?」

「さっきも言った通り、ワシら三人が転生したのは八十年前じゃよ」


 噛み合わねぇ。これはもう、一回最後まで読まないと駄目なやつだ。……この矛盾は内容を把握した後に考えよう。

 




【”創造主”は地球人の事を知るために、一人の少女に意見を求めた。もちろんたまたま選んだだけの少女だ。しかしその少女は襲来に端を発した暴動により、目の前で両親と兄を殺され、自身は凌辱される目に遭っていた。 


人殺しゲスは苦しんで死ねばいい。何度でも、何度でも呪ってやる……」


血走った目でそう言い残し、少女は”その存在”の前で命を絶った。何故命を自ら断つのか? ”創造主”には理解が出来なかった。それでも少女が、“悪意を持って他人を攻撃する地球人”を忌み嫌っていると感じる事は出来た。


だから“創造主”は、人を殺した者に罰を与える事にした。地球で人殺しをした者の記憶を奪って転生させ、二度目の死を与えるという罰。そのため、結果として全地球人を虐殺する事になった我ら三人は、殺した人の分だけの罰を受ける事になった。


追記

この星は過去にもだった。つまり、今現在この世界に住むローカルズも、遠い昔に送り込まれた罪人の子孫という事である】





「殺した人の分の罰、それが六十億って事やな」


 理不尽ここに極まれり。とでも言った感じだ。無作為に選んだ少女が幸せそのものだったら、こんな残酷な運命を課せられる事もなかったって事だよな。何でよりによってそんな不幸な少女を選択したんだよ……


「ところでさ、俺達が地球人類を絶滅させたジェノサイドってのは、いったい何があってそうなったんだ?」

「その部分が丸々書かれて無いっスね」


「地球人を存続させる価値があるかどうかを判断する為の条件。それは“創造主”が他惑星で捕虜にしていた“機械生命体”と闘うというものじゃった」

「またまたベタな展開だな……」

「地球の代表が負ければ、世界各国の主要都市に仕掛けられた“遅効性の毒ガス”が放出され、時間をかけて全人類が抹殺される。だが、勝てばその起動スイッチをこちらに渡すという条件じゃった」


 全世界の人の命を懸けた勝負か……。なんかすげえプレッシャーだな。


「そして“創造主”が選んだ地球人代表が」

「俺らなんだろ?」

 

 残念ながら、それに負けて地球が滅んだって流れだな、これは。


「……いや、タクマの甥っ子と姪っ子達だった」

「なんだよ、その酷い人選は。確かまだ小学生だよな?」

「そうや。だからワイは身代りを買って出たんや」

「ま、たまたま居合わせたワシとキョウジも、何となく勢いでな」

「マジか。我ながら付き合いがいいじゃねえか」


 なんとなく勢いって。でもまあ、判る気がする。もし今パティやレオンが同じ状況だったら、俺もタクマも身代りを買って出るだろうし。

 

「結局ワシら三人が戦う羽目になるのだが、準備期間として七日間与えられたのじゃ」

「七日間か……そんなに余裕があったら」

「そうじゃ、時間的余裕があり過ぎたんじゃ。ワシらを応援する者、非難し罵倒する者、取り巻く環境そのものがカオスじゃった」


 まあ、その辺りは容易に想像できる。その状況で非難される理由がどこにあるのか知りたいわ。身勝手なものだよな、人間なんて。


「そんな中、とある国から兵器提供の申し出があったんじゃ。秘密裏に開発していた兵器という事じゃが……。そのよくわからん兵器で戦う事になったのじゃよ」


「それでも負けてしまったんだな」

 そして世界が滅び……


「いや、勝ってしまったんじゃ」

「勝ったんか~い!」


 なんだこの展開。この流れでなんで俺等がジェノサイドに関わるんだ?


「“創造主”は約束通り、地球を壊滅させるスイッチをワシら三人に渡して去って行ったのじゃ」

「でもそれだと、めでたしめでたし。じゃねぇの?」

「なんやキョウジ。そうならんのが人間だとわかっとるやろ」



「ワシらは……“創造主”との勝負に勝ってしまった為に、世界中から狙われる事になったのじゃ」



次回! 第五章【Destiny of the Evil】 -悪の運命- ㉕国家の威信

3人の回想シーンです。

是非ご覧ください!

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