㉓【80年……】


「セイラお姉さまの自動人形オートマトンですか……」

「まあ、妥当なとこっスね」


「な、なによこの有象ども!」

「少しは驚きなさいよ、無像ども!」


 ……それは無理な話だ。


「このところ色々あり過ぎたからな。自動人形程度そこそこのネタじゃまったく驚く要素がないわ」

「本当にセイラの娘でした~。とかでも驚かへんな」


 まあ実際の所、自動人形オートマトンだろうが娘だろうが、はたまたクローンだろうが“どうでもいい”ってのが本音だ。


「で、ミサイルとかビームとか出るのか? セイラのコピーなんだろ?」

「いやいや、変形合体するんやろ。セイラのコピーやし!」

「飛べるんじゃないスか? セイラさんのコピーなんスから!」

「きっと自爆するのですわ! お姉さまのコピーなら!」


「君達、どういう目で私を見ているのよ……」



 和やかな雰囲気ではあるが、それは表面上の事だと皆が理解している。この後語られるであろう話が、今まで以上に重いものになる事がわかっているからなのかもしれない。


「ところで、そろそろ姿を現したらいかがですの?」


〔セイラが言っていたじゃろ? 『正面にいる』と〕


「カドミ、まさかお前……」

「椅子になってしまったんスか? お師匠さんよりひどいっスね!」


 タクマが石に転生している以上、カドミは椅子に転生しましたと言われても不思議はないのだが。


〔んなわけあるか!〕


「何を下らない事を言っている、この有象ども!」

「椅子の訳あるか、この無像!」


「何かムカつくっスね……」


 レオンもか~。そうだよな、このミニセイラズには何かお仕置きを考えておいてやろう。


〔まったく、お前らときたら……。全然変わってないな」



 呆れ口調で話しながら椅子の後ろからやっと姿を現すカドミ。まあ確かに『正面にいる』で合ってるな。しかしそこから出てきたのは……またもや子供だった。


「また自動人形オートマトンっスか?」

「この子もエマちゃんと同じくらいですわね」

「カドミ、おまえいい加減にしろよ。マジでぶん殴るぞ……」


「ワシがワシ以外の誰だというんじゃ?」


 カドミの口調とは言え、このガキの見た目で『ワシ』とか『~じゃ』とか言われても違和感しかないよな。


「……キョウちゃん、カドミのユニークスキル覚えている?」


「ああ、loopだろ? 何故か俺ら三人に付与された呪い。タクマには話してなかったけどな……」

「いや、知ってるで? ワイが知らん思うているのはキョウジだけや」


 そういう事はもっと早く言えよ。知っていて能天気なフリでもしていたのか、タクマは……


「そのloopはね、成長と退行を繰り返すというものなのよ」

「年を取ったら、そのあと子供に戻るという事っスか?」

「うむ、その通り。そしてそのサイクルが十年。ワシは、五年間で百歳になりその次の五年間で胎児になってしまうのじゃよ」


 なんだよそれ……。カドミはカドミでめちゃくちゃな事になってるな。


「そしてそこの子供は……間違いなくカドミよ」


 病院でセイラが『カドミはまだしゃべれない』と言っていたのは丁度退行の時期だったのか。多分ついこの間まで胎児だったのだろう。


「でもまあ、俺らの中では一番マシかもしれんな」



 実際、意識がはっきりした状態で百歳の体になったり胎児になったりするのは、精神的にもきついのはわかる。しかし“繰り返すという条件”があると言う事は、とりあえず”死”そのものの恐怖や苦しみからは解放されているという事。そういう意味での“マシ”だ。


「つかカドミ、お前さ……」

「なんじゃ?」

「俺たちがこの部屋に入る時から、椅子の後ろでずっと出番待ってたわけ?」

「……」


 無言でボロボロの椅子に座ろうとするカドミ。身体が幼児のため、座面に這い上がろうとするが届かない。ミニセイラズに尻を押してもらってやっと登り、向き直って座る。虚勢を張ろうとしてなのか、短い足を組み、頬杖をつきながらこちらを見据えてきた。


 ……こいつ、無言スルーするつもりか。


「まあ、いいか……。現状はわかった。チビカドミ、色々話してもらうぞ」

「何から聞けば良いのかわかりませんわ」

「とりあえず最初に聞いておかなきゃならないのは……“俺達の魂が大量殺人の業を背負っている”ってどういう意味だ?」


 これが原点にして最も重要な要素だ。これのせいで訳の分からない生き返りスキルで苦しむことになっているのだから。ここが解決出来なければ、俺は、俺達は“本当に死ぬまで”理不尽な最悪最低の苦しみを受け続けなければらなないのだから。


「それな。ワシも納得できるまで時間がかかったのじゃよ。ザックリ言ってしまえば、“ワシら三人が地球を滅ぼした”という事じゃ」


「……わけわからんぞ」

「いくつかの要素が重なっておるのじゃよ。一つ目がこの世界の“創造主”の存在じゃ」


 まあ、そいった存在がありうることは予測出来ていたので問題ない。ただ、“それ自体が何者なのか?”という点については言及する必要がある。


「そいつが世界創造から転生までかかわってんだろ?」

「まあ、そういうことじゃな」

「そいつ、何者や?」

「そこの所は明確な言い方は出来ない。というかはっきりとした正体はわからないのじゃよ」


 胡散臭くなってきた。それでも、今まで推測してきた事を裏付けるヒントがそこにあった。


「宇宙人とか未来人とかそんなとこだろうな。人を生き返らせたり記憶を書き換えたり異世界に移動させたり、俺らからしたら明らかにオーバーテクノロジーなのだから。だとしたらカドミ、お前はその情報どこで手に入れたんだ?」

「転生してから長い年月をかけて“創造主”をたらし込んで……。じゃない、友好関係を結んでだな……」


(今、たらし込んだ言うたで!)

(ま、カドミだしな)

(それって“創造主”が女性って事っスか?)

(女性の敵です。最低ですわね!)


 俗にいう女神ってやつか。カドミが手を出すのは仕方ないのかもしれん。転生前も浮いた話多かったからな……。


「聞こえとるぞ~。時間をかけて情報を引き出したんじゃよ」

「ちょっと待てカドミ。そこなのだが……」

「ええ、お兄さま達は転生してからまだ半年位と聞いていますわ」

「ああ、ワシ達三人は全員、

「……はい?」



 ……どういう意味だ?




次回! 第五章【Destiny of the Evil】 -悪の運命- ㉔ジェノサイド

それって不可抗力……

是非ご覧ください!



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