⑥【キョウジ&レオン】
「本当、呆れましたわ、レオン!」
(レオン、怒られてるぞ)
「お兄さまもですわ!!」
(キョウジ兄さん、ファイトっス!)
「何ですかまったく。忍び込むのはまだしも、備品を盗んで逃亡してデーモンと闘うなんて。また死んだらどうするおつもりですの?」
デーモンとの戦闘が終わり、二人とも貧血で座り込んでいる時にパティ達から連絡が入った。連絡とはいっても、向こうのタクマを介してこちらのタクマが口頭で伝えるという何とも厄介な連絡方法だ。
とは言え、国同士のインフラ設備が皆無のこの世界で、離れた位置で連絡を取り合えるのは大きなアドバンテージと言える。
「面目ない……というか……。おい、タクマ、“パティの口調で話す”のやめてくれ」
「そうッスよ。緊張してしまうじゃないっスか」
「言うてもなあ。向こうでそう言ってるんやで~」
タクマが話しているのは判っていても、口調まで真似て話されると何故か緊張してしまう。
「二人とも正座!!!」
「「はいっ!!」」
俺もレオンも思わず正座してしまったが……。いやマジでフラフラしてめまいとか辛いのですが。
「それで? デーモンの武器みたいなものが身体の中に入ったと?」
「ああ、まあいろいろ制限はあるけど、とりあえずはデーモンに対して強力な武器には違いないぞ!」
「そうっス! めちゃくちゃスゴいんスよ、これ!」
興奮冷めやらぬレオン。その一言にパティはさらにヒートアップしてしまった…。
「喜んでいるんじゃありませんわ! まったく……。なんでイギリスはそんなものを作ったのでしょう」
「いや、多分これはイギリスが直接作っていたんじゃないとおもう。施設はローカルズのエヴァンジェル大使館の敷地内にあったんだ」
「……エヴァンジェル家ですって?」
「多分……だけどな」
「……」
……あれ? 今度は黙りこくってしまった?
「どうした? パティ」
「なんか、考え込んでるで?」
「どうしたんスかね……」
エヴァンジェル家に何か引っかかるものがあるのだろうか……?
「キョウジ、セイラが詳しい状況聞いてきてるで」
「ああ、そうだ、セイラの部下のシルベスタなんだけど、彼がその施設の部屋に寝かされていたんだ」
「人体実験でもされていた。ってところかしら?」
「それはわからん。単に治療を受けているだけとも見えた。足首の所だけ出血しているみたいだったが、何か思い当たるか?」
「……」
「お? セイラまで考え込んでしまったで~」
「お~い……」
なんだこの状況は。話が進まねえ……
「とりあえずエクエスさん、合流場所を決めとこう」
「では、キョウジさん達のいる場所から北東に徒歩で二日くらいの所、ロックリーフの街で」
「ここから北東って言ってもなあ……」
「大丈夫っス。案内しまスよ!」
案内役を買って出るレオン。なんか妙に嬉しそうだ。
「知っているのか。頼む」
「ロックリーフは私達の故郷なんですよ。私もレオンも帰るのは久々ですが」
「そういう事っス。母ちゃん元気っスかね~」
そういう事か。……何か急にレオンが子供の顔つきに戻った気がした。以前エクエスさんが『父が生前~』と言っていたから、今は母親が一人暮らしって事なのかもな。ならば少し体が辛いが、全速力で帰ってやろう。
セイラ達が到着するまで、甘える時間が出来るだろうから。
「あとエクエスさん……。いや、これは全員しっかり聞いておいてくれ」
「なんでしょう?」
「俺とレオンの手の中に入り込んだ武器、多分これは
「同調せえへんワイには、キョウジのもレオンのもまったく光は見えへんかったで」
「そして、そこに魔力を与える事で何かしらの変化が起こる事までは確認している。つまり、セイラの手錠が
「……なるほど。本来の解除方法以外に、同調魔力の持ち主を見つけるという方法もあるという事ですね。雲を掴むような話ですが、こちらは移動しながら両方の解除方法を探ってみます」
話が早くて助かる。エクエスさんがいなかったら全然話が進まないところだったな。
「それからパティ、体力の付く食料や薬関係をしっかり確保してから向かってきてくれ」
「心得てますわ。お姉さまは任せて下さいませ!」
「キョウジさん達も気を付けて」
「ああ、ちゃんとレオンはママの元に送り届けるよ」
「また子供扱いっスか~」
そして俺達が行動を起こす為に、もう一手打っておく必要がある。
「あとそこに、ルキフェルとディーンはいる?」
「お、ちゃんと名前覚えとるやないか」
「二人にも頼みたい事があるんだ。結構重要な事なのだが……」
次回! 第五章【Destiny of the Evil】 -悪の運命- ⑦悔恨:パトリシア
巻き込んだのは、私なのですか…… (パトリシア談)
是非ご覧ください!
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