②【悪いクセ】
【イギリス領248-167】
「う~ん……。かなりヤバイんじゃないか? この場所は」
イギリス領入ってすぐの宿屋にレオンを待機させて、まずは自分だけで座標の位置の確認に忍んだのだが……。そこにはあまりに予想外の建物が建っていた。
街の入口から伸びるメイン通りから、少し奥まったこの座標にあるもの。それは“
問題は、その施設のすぐ裏に”イギリス領エヴァンジェル大使館”がある事だ。それも、外壁一枚で隔たれているだけで同じ敷地内にあるという、いかにも『関係ありますよ』といった感じのつくりだった。
「イギリスの暗躍の裏にローカルズ王家がいるという可能性が出てきたな……」
エヴァンジェル家はローカルズ王家の中ではそこそこの力を持つ家柄だ。ただ、今の王には子がおらず、次期国王候補がいないという。正確には”王子がいたが今は王族ではなくなっている”らしい。経緯は知らないけど。その為、現状は衰退の一途をたどる王家となってしまっている。
……何か起死回生の一手を求めてイギリスと手を結んでいるのかもしれない。もちろん、今回の件とはまったく無関係の可能性もあるけど、一応気にかけておこう。
この場所までは街道をバイクでひた走って三日程。その間、アメリカ領の方ではひと騒動が起きていた。
エクエスさんがアメリカと交渉し元外交官と面会するも、セイラの手錠の解除方法はわからず。ただその手錠は『
そして、騒動となっている厄介事。――山南が、アメリカ領の刑務所から脱走した。現在完全に行方不明だ。セイラかパティを追っている可能性がある。更には日本政府の
もしそうなった時に”
そして更にもう一つ。たった今、頭を悩ませる事案が発生した。研究施設の地下一階の部屋にベッドが並べられ、そこに寝かされている人達を発見。魔力は感じないのでおそらく全員ローカルズなのだろう。
その中の一人に見覚えがあった。見覚えがあるどころか一緒に戦った事のある仲間……セイラの部下のシルベスタだった。身体全体に白い布がかけられ、足先の方だけ赤く
「あれは……血か?」
拘束されてはない。自らの意思でそこにいるのだろうか? 何かしらの手術でも受けているのかもしれないが、それにしてもなんでこの場所でなのだろうか。魔道具研究施設だよな……?
何かここは相当ヤバイ感じがする。一旦出てレオンと合流し、セイラ達と情報共有しておいた方が良さそうだ。
彼を連れ出す事も考えなかった訳ではない。魔法で浮かせばあの巨体でも連れ出すのは可能だと思うが……怪我でもしていて純粋に治療を受けているとしたら、無暗に動かすのは危険だ。医療知識があれば判断付いたかもしれないけど。
後ろめたさを感じながらも一旦離脱しようとしたその時、通路の少し先に”奇妙な魔力を感じる部屋”を見つけてしまった。これは、そう、
一方では怪我人の治療をし、一方では
現状は一刻も早くこの場を離れた方が良さそうなのだが、何というか……この部屋の中に何か”重大な鍵”があるような気がしてならない。ただの勘でしかないが、嫌な予感程よく当たる。ったく、この現象に誰か名前つけてくれよ……。
……パティからは『お兄さま、悪いクセですわ!』とか言われるのだろうな。
(キョウジ兄さん)
(はうわっ!!!)
部屋に入ろうとした時、後ろから
(レオン、なんで入ってきた?)
(パトリシアさんから……)
(何があった? パティがどうかしたのか?)
(いや、そうじゃなくて。パトリシアさんが『お兄さまは”また”変な事に首を突っ込むだろうから止めて』と)
う~む。当たっているだけに何も言えん……
(キョウジ、ここはなんや?)
(何かわからんから調べようとしているのだが……)
(嫌な感じや。さっさと調べて脱出するで)
(え? 入るのでスか?)
(パティには黙ってろよ~)
(でもでも、止める様にとパトリシアさんが……)
こういう時の殺し文句はただ一つ!
(レオン! “男の約束”だ!)
(了解っス! 男っス!!!)
多分魔力持ちなら皆”嫌な感じ”を受けるのだろう。それでも『すぐに離れよう』と言わないのは、タクマもこの中に何かあると感じ取っているのかもしれん。
(それにしても……。鍵かかってないっスね)
不用心なのか、それとも性善説で凝り固まっているのか。いずれにしても、イギリスの転生者が管理していたらこんな
……ドアを慎重に開け、部屋の中をのぞき込んでみたが、侵入者感知用のセンサーの類はなさそうだ。最初に不用心さを見せて安心させ“実はセンサーが滅茶苦茶ついている!”とか考えたが、まったくの無駄だったようだ。
入ると目に飛び込んできたのは大量の……
「しかしこれは……」
「こんなに並んで……。凄いっスね」
「なんや、これまた壮観やな~」
次回! 第五章【Destiny of the Evil】 -悪の運命- ③黒い蔦
ホンマ、あほやなぁ。 (タクマ談)
是非ご覧ください!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます